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    ―浴槽内での溺死及び溺水による死亡事故―

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第6回 病死か事故死かの判断基準
―浴槽内での溺死及び溺水による死亡事故―

一般社団法人ソーシャルバリューファーム 代表理事 右田 修三

 

 「道を歩いていたら車にはねられて死亡」のような単独の交通事故が原因で死亡してしまった場合には、事故死亡であることに疑いをはさむ余地はありませんが、死亡の直接の原因が事故か病気かがはっきりしないケースは割とあるものです。その際、生命保険に加入していたら、病死か事故死かの違いで支払われる保険金の額が異なることがあることから、トラブルになってしまう可能性があります。今回、取り上げる判例は、日本人の死亡事故の中でも多く見受けられる浴槽内での溺死に関する訴訟です(登場する人物・団体名は仮名です)。

 

■ 浴槽内での死亡は事故死か、それとも病死か

 

 一人暮らしのきぬ(71歳)は、自宅の浴槽で死亡しているのを訪ねてきた家族によって発見されました。

 その際、きぬは浴槽に膝を立てたままの状態で座って首をうな垂れており、浴槽のお湯の量はきぬの脇ぐらいまでで顔は湯に浸かっていないという状況でした。

 死体の解剖を行った結果、直接の死因は溺死(推定)、死因の種類は溺水による不慮の外因死と判断されました。

 きぬは団体保険(傷害保険)の被保険者であったため、保険金受取人に指定されていたきぬの娘の麻実は、同契約に基づく死亡保険金1,102万円を請求しました。

 本件保険契約には、被保険者が急激かつ偶然な外来の事故によってその身体に傷害を被り、その直接の結果として死亡したときに死亡保険金が支払われる旨の規定があったため、本件保険契約の保険者であるY保険会社はきぬの発見時の状況や、きぬが死亡の約1か月半前に医者に心不全、気管支喘息等の症状で入院を勧められていたことなどから、きぬの直接の死因は溺死ではないと主張しました。また、仮に直接の死因が溺死だとしても、それは心不全発作等の疾病に起因したものであるため外来の事故とは認められないと主張し、麻実の保険金請求を却下しました。

 麻実はY保険会社に対し、死亡保険金の支払いを求めて提訴しました。

 

■ 地裁判決では溺死と認定

 

 第1審(神戸地裁平成17年6月14日判決)では、解剖に基づく判断には十分な合理性があり内因死の所見もないことから、麻実の請求を認容しました。そのため、Y保険会社は控訴しました。

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