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    ―普通失踪宣告は不慮の事故死となるか―

icon元引受査定担当者による保険判例解説

第11回 失踪宣告の際の保険金支払い
―普通失踪宣告は不慮の事故死となるか―

一般社団法人ソーシャルバリューファーム 代表理事 右田 修三

 

 みなさんのお客様の中で、万一、行方不明になってしまった被保険者がいた場合に、その身内の方に向けてどのようなアドバイスをしますか? 今回、取り上げる判例は、前ぶれもなく、ある日突然、行方不明になってしまった方の生命保険をめぐる判例です(内容を理解しやすくするために、判例の趣旨は変えずに事実関係の一部をシンプルに改めています。登場人物・団体はすべて仮名)。

 

■ ある日突然、行方不明に

 

 鷹鹿精機(株)は、主に精密金型の製造・販売を目的とする会社です。事件が起きる昭和61年当時の業績は良好で、県内でも指折りの優良企業と評価されていました。鶴男はその会社の常務取締役を務め、工場全般の技術部門の責任者をしていました。会社は同族経営であり、当時、鶴男の父が会長、鶴男の長男が代表取締役、次男が専務取締役を務めていました。

 鶴男は、昭和61年1月16日、いつもどおりに鷹鹿精機(株)本社で仕事をし、午後5時頃、常務室で「ちょっと出かけてくる、30分位で戻る」と事務員に言い残し、机上に書類を出したまま、部屋の電気をつけたままの状態で、鶴男は自家用車で外出しましたが、それっきり会社には戻ってきませんでした。また、その日は株取引のある証券会社課長と、午後8時に鶴男の自宅で面会をする約束をしていました。鶴男宅を訪問した課長は午後10時頃まで鶴男の帰宅を待ちましたが結局、戻ってきませんでした。

 鶴男は翌朝になっても自宅に帰ってきませんでしたので、不安になった鶴男の妻の羊子は鷹鹿精機(株)本社に連絡し、付近を見回ったところ、市内のボーリング場の駐車場に放置されている鶴男の自家用車を発見し、その後、警察に鶴男の捜索願を出しました。

 捜索願を受理した警察は、捜査本部に準じる体制を敷いて、鶴男の所在に関する捜査を始め、家族等を含めた関係者からの事情聴取、金融機関等に対する照会、鶴男の顔写真や特徴を記したチラシの配布による情報収集等を行いました。また、鶴男の失踪を警察が捜査していることについては、当時、地元の新聞等でも多数報道されました。

 捜査をする過程で、失踪した当日、鶴男の自家用車が発見された駐車場で、別の男性が運転する乗用車に鶴男らしき人物が乗り込んだという情報を得たり、身代金を要求する内容の電話がかかってきたことなどもありましたが、結局、鶴男の所在に結びつく有力な手掛かりはなく、鶴男の所在は不明のまま10年以上が経過しました。

 平成13年、羊子は家庭裁判所に鶴男の失踪宣告の申立てをしました。裁判所は、鶴男が昭和61年1月16日以来16年以上生死が分からないものと認め、平成14年に鶴男を失踪者と確定しました。

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