No.3843 自転車保険加入義務化の自治体が急増
自転車保険への加入を義務化する自治体が増えています。兵庫県、大阪府、埼玉県などでは以前から義務化されていましたが、2019年10月からは神奈川県、長野県、静岡県などが、2020年4月には東京都も加わります。今回は神奈川県の条例を参考に内容を確認していきます。
● 義務化の背景にある高額な賠償責任
義務化する自治体が増えてきた背景には、自転車が関係する重大な交通事故が発生していることなどがあります。運転免許を必要としない自転車は身近な乗り物ですが、法律上は「軽車両」にあたり、歩行者との交通事故では重い責任を負う場合があります。過去には歩行者との交通事故で、約9,500万円の賠償金支払いを命じられたケースもありました。
神奈川県では、「神奈川県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」を2019年3月に公布し、「自転車の安全で適正な利用を促進するための施策の基本的事項」として、大きく以下の3つについて規定しています。
(1)の「自転車の安全適正利用のための取組み」としては、県による総合的な施策の策定・実施と県民への情報の提供・支援等が、また、(2)の「交通安全教育の実施」としては、学校等での交通安全教育や、幼児、児童、高齢者へのヘルメットの着用等について規定されています。
● 個人賠償責任保険も対象に
そして、(3)の「自転車損害賠償責任保険等の加入義務化」として、自転車の利用者等に自転車損害賠償責任保険等の加入を義務付けるとともに、自転車小売店や学校には加入の確認を求めています。
この条例の「自転車損害賠償責任保険等」とは、「自転車の利用に起因する事故により他人の生命又は身体を害した場合における損害を填補することができる保険又は共済」と定義されており、自転車向けの保険のほかに、自動車保険や火災保険の特約としての個人賠償責任保険、PТA保険や各職域での団体保険、自転車安全整備士による点検を受けたことで加入できるТSマーク付帯保険なども含まれます。
「自転車保険への加入義務化」というニュースを聞いて、「自転車保険」に加入しなければと考える人もいるようですが、自転車で他人に傷害を負わせてしまった場合が補償の対象になる個人賠償責任保険でも構いません。
対象になる保険の種類や契約形態がさまざまで、加入状況をすぐに確認できないという理由から、条例では罰則が設けられていません。しかし、自転車を利用すれば誰にでも交通事故のリスクがあるので、保険への加入は必須だといえます。この機会に自転車保険等への加入や見直しを考えている人がいれば、万一の場合に不足がないよう十分な保険金額で契約すべきであることをお伝えできるとよいのではないでしょうか。
2019.11.25
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森田 和子(もりた・かずこ) FPオフィス・モリタ 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、DCA(確定拠出年金アドバイザー)
FPオフィス・モリタ http://okane-net.com/
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