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    ~一部負担増も財務省案は大半が見送り~

No.3866 2020年介護保険法改正へ向けて取りまとめ
~一部負担増も財務省案は大半が見送り~

● 見送りはケアプランにかかる自己負担など

 

 ここ数回の介護保険制度改革からすれば、不思議な光景といえそうだ。2019年12月16日、2020年介護保険法改正(施行の多くは2021年度)に向けた、社会保障審議会・介護保険部会の見直し案が示された。「不思議な光景」というのは、同じ年の11月に財務省の財政制度等審議会による「令和2年(2020年)度予算の編成等に関する建議」で示された介護保険制度の改革案の大半が「見送り」とされたからだ。確かに、サービス利用にかかる一部負担増も盛り込まれているが、いわば「本丸」的な部分はほぼスルーされている。
 財務省側の建議では、主だったものとして、以下のような改革を求めていた。

 

ケアマネジメント(居宅サービスの入口となるケアプラン作成など)にかかる利用者負担の導入(現状では10割給付。つまり原則無料)。

要介護1・2の訪問・通所介護を給付サービスから外し、市町村が手がける事業(介護予防・日常生活支援総合事業)に移行させること。

サービス利用の自己負担を原則2割とすることや、2割対象者の範囲を広げること(現在、2、3割負担の対象者は9%と1割未満)。

 

 急伸する高齢者人口と医療の一部が介護サービスへと組み込まれつつある中、2000年の制度スタートから20年で、介護保険の総費用は約3倍に膨れ上がっている。これに危機感を抱く財務省としては、少なくとも上記3つは介護保険の持続可能性を探るうえで欠かせないテーマとあげていた。それが、厚労省側の検討会では「引き続き検討を行う」としてゼロ回答を示したわけだから、「何が起こったのか」と思うのも当然だろう。
 ちなみに、一部盛り込まれた負担増の主なものは以下の2つ。1つは、特養ホームをはじめとする介護保険施設に入所した場合などの居住費・食費にかかる本人支出額について、所得段階で細分化したうえで一部(世帯全員が市町村民税非課税世帯で本人年金収入等が120万円超)について引き上げること。もう1つは、高額介護サービス費にかかる月あたり自己負担限度額について、現行の「現役並み所得相当(年収約383万円以上)」を3分割し、高額年収者の上位2段階の引き上げを行うことだ。たとえば、上記の自己負担限度額で負担増となる層は全体の2.3%程度にとどまる。

 

● その次の改正をにらんだ布石も!?

 

 このように、一見「無風」に近い状況だが、さらに次の法改正(2024年度施行が見込まれる)をにらんだうえでの「布石」も見ることができる。先に「要介護1・2の訪問・通所介護の総合事業移行」は見送りになったと述べたが、この総合事業について、「要介護認定を受けた人でも利用できるように制度の弾力化を図る」ことが示されている。総合事業でも、訪問・通所介護にあたるサービスはあるが、保険給付によるサービスの人員配置等を緩和したり、住民によるボランティア等が主体となったものが設定されている。こうしたサービスを「要介護1以上でも柔軟に使える」ようにするというわけだ。なお、現行でもまったく使えなくはないが、要支援認定者等の利用者を優先させる制限が設けられている。
 もともと総合事業は2012年度に誕生しているが、その時に「要支援1・2の人」も「使える」というしくみでスタートした。それが、2015年度から「要支援1・2の人の予防訪問・通所介護を総合事業に移行させる」と一段踏み込んだ改正が行われた経緯がある。要介護1・2についても、同様の踏み込みが2024年度に実施される可能性もある。こうした先行きの改革についても注意しておきたい。

 

2020.01.09

 

 

田中 元(たなか・はじめ)

 介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。
 主な著書に、『〈イラスト図解〉後悔しない介護サービスの選び方【10のポイント】』『介護リーダーの問題解決マップ -ズバリ解決「現場の困ったQ&A」ノート -』(以上、共にぱる出版刊)、『スタッフに「辞める!」と言わせない介護現場のマネジメント』(自由国民社刊)、『現場で使えるケアマネ新実務便利帳』(翔泳社刊)など多数。

 

 

 

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第4章
【応用編③】対リハビリ職との連携では自立支援・重度化防止がカギとなる

第5章
【応用編④】栄養と口腔ケアにかかわる専門職との連携のポイント

第6章
【応用編⑤】対行政・包括等との連携では複雑化した課題解決をめざす

第7章
【応用編⑥】「共生社会」をめざす連携で生まれる介護現場の新たな課題