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    ~収支差率なお悪化。ケアマネ不足も深刻~

No.3872 依然として厳しい介護市場動向。打開策は?
~収支差率なお悪化。ケアマネ不足も深刻~

● 介護報酬プラス改定の直後でも収支は悪化

 

 ある程度予想されていたとはいえ、介護サービス業界にとっては改めて厳しい現実を突きつけられたといえる。2019年12月27日、厚生労働省の社会保障審議会・介護給付費分科会で、令和元年(2019年)度の介護事業経営概況調査の結果が公表された。これは、介護保険事業所・施設の平成29・30年(2017・2018年)度決算状況(調査時期・令和元年5月)を示した調査である。
 それによれば、平成30年決算における全サービス平均の収支差率は3.1%(税引き前)で、対前年(2017年)度決算比でマイナス0.8ポイントの減少となった。収支差率というのは、「収益」に対する「収益と費用の差額」の割合を指し、これが低いほど経営状況が厳しいことを示す。ちなみに、2015年度に介護報酬が大幅に引き下げられた(マイナス2.27%)直後の2015年度決算の収支差率は、それでも3.8%にのぼっていた。今回は、2018年度に介護報酬改定がわずかながらプラス(0.54%)となった直後の調査結果であり、それでも上記の収支差率より低いという状況がサービス経営の深刻度を表している。
 主たる原因は明らかだ。今調査では、収支差率とともに「収入に対する給与費の割合」がサービス種別で示されている。それによれば、対前年度決算比で収支差率が悪化しているサービスほど、給与費割合が上昇している傾向が顕著となっている。全産業通じて言えることではあるが、従事者不足の中で給与費割合を上げざるを得ないという状況が経営を圧迫していると見ていいだろう。

 

● 経営が厳しく給与を上げられないサービス

 

 問題は、従事者不足が深刻なのに「給与費割合」を上げられないサービスもあることだ。代表的なのが、在宅サービスの入口でケアプラン作成やサービス調整を担う居宅介護支援。同サービスの収支差率は対前年度比でプラス0.1%改善したが、全サービスの中で唯一マイナスという状況が続いている。そして、給与費割合は0.3%の悪化。常勤換算1人あたりの給与費を見ると、2015年度決算時と比較して常勤のケアマネジャーで2万円以上下がっている。たとえば、特養ホームの介護福祉士が約2万円アップしているのとは対照的であるとともに、本来介護福祉士より上位資格であるはずのケアマネジャーの方が「給与が低くなる」という逆転現象も生じている。
 こうした状況がエスカレートすれば、「介護福祉士からケアマネジャーになる(ケアマネジャー受験は、介護福祉士などの国家資格を取得して一定の実務経験を積むことが要件となる)」というキャリアステップは崩壊しかねない。つまり、在宅サービスの入口となるケアマネジャーが不足する懸念が高まり、結果として介護保険利用に支障が生じることが危惧される。高齢患者の入退院支援にはケアマネジャーも深くかかわっており、患者の円滑な在宅復帰をうながすという国の施策にも大きな影響をおよぼすことになるだろう。
 こうした状況を踏まえ、国もようやく重い腰を上げようとしている。昨年末、厚労省の社会保障審議会・介護保険部会がまとめた「介護保険制度の見直し案」では、初めてケアマネジャーの処遇改善の必要性に言及した。具体策の議論はこれからだが、たとえば、すでに実施されている「介護職の処遇改善にかかる報酬上の加算(介護職員処遇改善加算など)」のようなしくみをケアマネジャーにも導入することが考えられる。とはいえ、他サービスの収支差率も悪化する中で、居宅介護支援だけに財源を集中させるわけにもいかない。全体のバランスをどう取っていくのかという施策側の舵取りが注目される。

 

2020.01.23

 

 

田中 元(たなか・はじめ)

 介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。
 主な著書に、『〈イラスト図解〉後悔しない介護サービスの選び方【10のポイント】』『介護リーダーの問題解決マップ -ズバリ解決「現場の困ったQ&A」ノート -』(以上、共にぱる出版刊)、『スタッフに「辞める!」と言わせない介護現場のマネジメント』(自由国民社刊)、『現場で使えるケアマネ新実務便利帳』(翔泳社刊)など多数。

 

 

 

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目 次

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第2章
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第3章
【応用編②】対看護・保健連携で相手の得意エリアをつかみとるポイント

第4章
【応用編③】対リハビリ職との連携では自立支援・重度化防止がカギとなる

第5章
【応用編④】栄養と口腔ケアにかかわる専門職との連携のポイント

第6章
【応用編⑤】対行政・包括等との連携では複雑化した課題解決をめざす

第7章
【応用編⑥】「共生社会」をめざす連携で生まれる介護現場の新たな課題