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No.3554 外国人による介護業務機会の拡大と実現

● 2008年のEPA枠から始まった外国人介護士の受入れ

 

 2017年後半から、各種制度改正により介護業務にかかる外国人の参入枠が大きく拡大された。介護分野といえば、恒常的な人材不足が問題となっているが、外国からのマンパワーに頼る時代が近づいているのだろうか。
 まず、制度見直し前から設けられている外国人介護士候補の受入れ枠について整理しよう。具体的には、EPA(経済連携協定)による3か国(インドネシア、フィリピン、ベトナム)からの介護福祉士・看護師候補者の受入れだ。スタートは今から10年前の2008年、インドネシアからの受入れだった。その翌年の2009年にはフィリピンから、2014年にはベトナムからの受入れがそれぞれ加わっている。
 介護福祉士候補者枠の場合、在留期間は4年。その間に日本の介護施設等で(雇用契約による)就労・研修を行い、介護福祉士の国家試験に臨む。ここで合格して介護福祉士資格が取得できれば、引き続き在留しながらの就労継続が可能となる。この在留にかかるフレームのことを「特定活動」という。
 仮に不合格の場合でも、一定条件(国家試験の点数が一定水準以上、次の国家試験に向けて精励する意思があることなど)をクリアすれば、1年間の滞在延長後に次年度の国家試験の受験が可能となる(それでも不合格だった場合は「帰国」となるが、短期滞在で再度入国しての国家試験受験が可能)。ちなみに、2017年度までの累積での受入れ者数は3,492人、合格者数の合計は719人となっている。

 

● 入管法等の見直しにより「介護」による在留資格が拡大

 

 このEPA枠以外での受入れとして、2017年に2つのしくみが整えられた。
 1つは、2017年9月から入国管理法上の「在留資格」に「介護」が創設されたことだ。具体的には、外国人留学生として来日し、介護福祉士養成校(2年以上)で学ぶ間の措置となる。この養成校を卒業して国家資格である介護福祉士を取得すると、EPAのケースと同じく「特定活動」枠の扱いとなる。つまり、介護施設等で従事しながらの継続的な在留が可能となるわけだ。注意すべきは、2017年度から介護福祉士の資格取得要件が変わり、養成校卒業者でも国家試験の受験が必要になったこと。2021年度の卒業者までは5年間だけ「介護福祉士」の資格が持てる経過措置があるが、5年を超えて資格を継続させるためには、やはり国家試験の受験が必要となる。
 もう1つは、2017年11月から外国人の技能実習制度に介護職種が追加されたことだ。技能実習制度は、国際貢献のために開発途上国等の外国人を最長で5年間受け入れ、OJTを通じて相手国に技能を移転することが趣旨となっている。受入れ側の介護施設等においては、技能実習指導員や生活指導員の選任が求められ、技能実習指導員には介護福祉士か同等以上(看護師など)の資格の保有が必要となる。
 以上のように「外国人による介護業務機会」が広がったわけだが、たとえば技能実習制度のフレームなどは、「介護固有の要件」がかなり細かく決してハードルは低くない。実際、今年1月段階での申請はゼロとなっている。

 

● 模索を続ける介護人材の拡充施策

 

 一方、国としては(EPAの時からそうであったように)依然として「人材不足への対応」ではなく、あくまで相手国との連携強化や技能移転が趣旨であることを強調している。
 今後、労働力人口の減少などに直面するわが国として、さらに踏み込んだ施策方針へと踏み込めるかどうか。介護ニーズの急速な高まりの中、制度上の転機は始まったばかりかもしれない。

 

2018.04.12

 

 

田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。
主な著書に、『2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート』『認知症ケアができる人材の育て方』(以上、ぱる出版)、『現場で使える新人ケアマネ便利帖』(翔泳社)など多数。