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    ~2020年度施行のインセンティブ改革~

No.3636 医師の偏在を新たな認定制度で解消!?
~2020年度施行のインセンティブ改革~

● 医師偏在の是正に向けた改正法が成立

 

 2018年7月18日、衆議院本会議で「医療法及び医師法の一部を改正する法律案」が可決・成立した。この法案は、「地域間の医師偏在の解消」を目的としたものだ。厚生労働省(以下、厚労省)が2008年と2014年で比較したデータによれば、47都道府県の349の医療圏のうち、301医療圏で医師の増加が見られたのに対し、41医療圏では逆に医師が減少していることが明らかになった。また、36の都道府県において、医療圏ごとの医師数の較差も拡大している。ちなみに、医師数全般についても、OECD加重平均(人口10万人に対する医師数のOECD加盟国の平均)を現行で下回っているが、これは現在の医学部定員数が維持された場合に2025年には解消されると推計されている。要するに、喫緊の課題となるのは「全体の医師数」ではなく、「その偏在」にあるわけだ。
 この医師偏在の解消に向け、今回の法改正で具体的にどのような対策が示されたのか。たとえば、医学部などの医師養成過程を通じて医師確保対策を充実させるという方策が見られる。医学部を例にとれば、都道府県知事から大学に対して、「地域枠」や「地元出身入学者枠」を設定・拡充するよう要請する権限が設けられた。また、地域の外来医療機関の偏在や不足を「見える」化するため、地域ごとに外来医療関係者による協議の場を設けるなどのしくみも講じられている。さらに、今改正で目玉の一つとなっているのが、「医師少数区域などで勤務した臨床研修等修了医師」に対して、厚労大臣による新たな評価・認定のしくみを設けるというもの。つまり、医師個人に対するインセンティブをもって、地域の医師偏在を解消していくという施策である。

 

● 経済的インセンティブ等の議論はこれから

 

 この評価・認定制度により、どのようなインセンティブが付与されるのか。法律案の要綱に示されているのは二つ。一つは、先の新たな認定を受けた場合、その旨を広告することができるというもの。もう一つは、地域医療支援病院等(医師少数区域等において医療の確保のために必要な支援を行う病院など)において、原則として先の新たな認定医を管理者としなければならないというものだ。
 ただし、管理者という立場に加えて、医師個人にかかる経済的なインセンティブや本人が疲弊しないための働き方の環境整備も欠かすことはできないだろう。これらについては、今後診療報酬の改定や各種予算措置を通じて進んでいくと見られる。ちなみに、新たな認定・評価制度の施行は2020年4月となっており、診療報酬との関連では、20年度改定に向けた議論で肉づけされていくことになる。なお、「働き方」については、厚労省が打ち出している対策例として「グループ診療に資する交代医師派遣」や「医師間の(ICT等による)遠隔相談支援」などがあげられている。
 そうした中、厚労省が示した2019年度予算の概算要求では、先の認定制度の創設等にともなう対応として新規で5,300万円が計上された。ただし内訳は、認定医師の情報管理等に必要なシステム構築に向けての調査・検討にとどまっている。恐らく、次期診療報酬改定の議論のさなかに、どれだけの医師が認定申請を行うかという見通し等のデータなどを提示するための予算も含まれているのではないか。果たして実効性のある施策となるのか、今後の中医協などの議論にも注目したい。

 

 

2018.09.27

 

 

田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。
主な著書に、『2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート』『認知症ケアができる人材の育て方』(以上、ぱる出版)、『現場で使える新人ケアマネ便利帖』(翔泳社)など多数。

 

 

 

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第3章
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第4章
認知症対応の強化、共生型サービスなど地域の課題を「丸ごと」解決するしくみ

第5章
限られた資源の「適正化」を図る現場にとっては「厳しい」見直しに!

第6章
支え手不足時代に対応する介護保険の「お金」と「人材」の話

巻末チェックシート【改正介護のポイント・早見表】