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    ~厚労省が開催する「上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」より~

No.3662 医療資源を使う国民への啓蒙・啓発強化へ
~厚労省が開催する「上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」より~

● 時間外・休日の外来集中がもたらす問題

 

 2018年10月5日より、厚生労働省の医政局で「上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」が開催されている。その名のとおり、患者やその家族の「医療のかかり方」に関する理解をいかに深めるかをテーマにした会合だ。開催要綱では、患者側が自身にかかる受診の必要性や医療機関の選択などを適切に行なうことができれば、時間外・土日の受診や大病院への患者集中による混雑緩和にもつながるというメリットをかかげている。また、その結果として、医療提供者側の過度な負担が緩和され、医療の質や安全の確保の点からも効果が期待できるとしている。
 2014年受療行動調査によれば、「大病院や土日祝日に外来患者が集中する」ことによる影響が散見されている。たとえば、「診察の待ち時間が30分以上」の割合は5割近く(1時間以上も約25%)に達し、「診療時間3分未満」の割合は、2011年と14年を比較した場合に13.6%から16.3%へと増大した。一方、医師側の状況では、「1週間の労働時間が週60時間超え」の割合は41.8%で、あらゆる産業の従事者の中でも突出している。さらに、医療事故につながりかねないような「ひやり・はっと」体験について、疲労感や睡眠不足感を「感じる」という医師では体験が常態化しているケースが1割強にもおよんでいる。

 

● 子ども医療電話相談なども認知はまだ低い

 

 ちなみに、医師に過剰な負担をかける時間外・土日休日受診では、緊急性のない軽症者の自己都合(日中には用事があるなど)によるケースが「コンビニ受診」として問題化している。また、小児医療では、「子供が夜間に熱を出した」という場合、保護者としては極度の不安から時間外受診へとかけこみがちだ。だが、そうした小児の時間外・休日受診の9割が入院の必要がない軽症というデータもある。
 特に医師が疲弊から退職に追い込まれやすい小児医療では、上記のような軽症による時間外・休日受診の緩和を図るべく「子ども医療電話相談事業(♯8000)」が全都道府県で実施されている。これは、地域の小児科医師等による小児患者の保護者向けの電話相談で、全国どこでも患者の症状に応じた適切なアドバイス(緊急性の有無の伝達も含む)や症状によっては迅速な対応を図る。保護者にとっては大きな不安解消となる相談資源だが、認知度はまだ1割にとどまるのが現状だ。

 

● 時間外受診を半減させた事例紹介も

 

 懇談会では、こうした「#8000」などの活用促進も含め、「わかりやすいリーフレットの作成」や「効果的な広報のあり方」などを検討課題として上げる。また、すでに民間団体や企業、保険者などがさまざまな対策に乗り出しているが、これらの好事例を横展開しつつ厚生労働省の取組みとの連携を図ることも視野に入れている。たとえば、先の小児医療に関して、地域の小児科医の(退職による)減少に危機感を抱いた子育て中の母親が、「コンビニ受診を控える」などのスローガン作成や「#8000の活用」にかかる啓発を行なったという活動例が紹介されている。結果として、小児科の時間外受診が半減したという。
 今後は、12月に討議結果を「医師の働き方改革に関する検討会」に報告し、2019年度も普及啓発等について議論が継続される予定である。一方、懇談会では、「医療者が大変だから受診抑制します、という発言の仕方では国民の理解は得られない」といった意見も出され、啓発そのもののあり方も論点となりそうだ。

 

 

2018.11.15

 

 

田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。
主な著書に、『2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート』『認知症ケアができる人材の育て方』(以上、ぱる出版)、『現場で使える新人ケアマネ便利帖』(翔泳社)など多数。

 

 

 

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第2章
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第3章
自立支援・重度化防止に向けた具体的な仕掛けとは何か【今改定の重点化ポイント②】

第4章
認知症対応の強化、共生型サービスなど地域の課題を「丸ごと」解決するしくみ

第5章
限られた資源の「適正化」を図る現場にとっては「厳しい」見直しに!

第6章
支え手不足時代に対応する介護保険の「お金」と「人材」の話

巻末チェックシート【改正介護のポイント・早見表】