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    ~何を進める? 課題解決への道筋は?~

No.3690 介護現場革新会議がスタート
~何を進める? 課題解決への道筋は?~

● 介護人材確保が危機的状況の中で……

 

 2018年12月11日、厚生労働省(以下、厚労省)内に「介護現場革新会議(以下、革新会議)」が設けられた。将来的な労働力人口の減少をにらみつつ、現場職員の負担軽減と業務の効率化を進めるための好事例を把握・分析し、横展開を図っていこうという取組みだ。
 現状においても、介護現場の人材不足は深刻化している。2017年の時点で介護分野の有効求人倍率は3.50。これは全産業の1.50という数字の倍以上となる。また、介護福祉士養成施設の入学者数は、2010年と2017年で比較した場合に半減以下まで落ち込み、定員充足率も4割台となっている。2025年には団塊世代が全員75歳以上となるわけだが、高齢化とともに急増する要介護者を「誰が支えるのか」という点で危機的な状況が迫っている。
 では、今回の革新会議で具体的に何を進めようとしているのか。主なテーマは以下の3つ。

 

①  
業務仕分け、ロボット・ICTの活用、元気高齢者活用の三位一体型効率化

②  
①のロボット・ICTの具体的な活用による好事例の収集・分析

③  
護業界のイメージ改善

 

 これらのテーマについて、2019年1月中にまずは施設現場を中心とした業界団体内での検討を進め、議論の方向性をとりまとめる。その方向性に沿って、4月以降に全国でパイロット事業を展開する予定だ。
 ちなみに、2019年10月には、10%への消費増税分を財源とした介護職員に対する新たな処遇改善策がスタートする(詳細については、別の機会で解説したい)。革新会議が進めるパイロット事業による好事例の横展開に、新たな処遇改善策を絡めつつ、介護人材の働き方改革を一気に進める──これが政府の描く見取り図といっていいだろう。

 

● 「元気高齢者の活用」による人材の拡大

 

 特に注目したいのは、上記①の「三位一体型効率化」だ。これによって具体的にどのような課題を解決しようとしているのか。まず「業務仕分け」だが、介護現場の中には業務の割り振りが十分に行われていないケースも多い。そこに人材不足という要素が加わると、1人の職員が食事・入浴・排せつの介助から掃除やリネン交換まで「何でもこなさざるを得ない」という状況が生まれやすい。これが職員の負担増を生む構造と位置づけられている。
 そこで、作業分析や役割分担の見直しを行ない、介護職員が専門性を発揮するコア業務(利用者の生活行為の介助など)とそれ以外のノンコア業務(掃除やリネン交換など)に分ける。ここで革新会議が想定しているのが、後者のノンコア業務に介護助手をあてるという方策である。では、その介護助手を誰が担うのかというところで、「元気高齢者の活用」につながってくる。
 この元気高齢者の活用については、2015年度に三重県でモデル事業がスタートし、先駆的な取組み事例として厚労省がさまざまな場面で紹介している。また、内閣府の経済財政諮問会議でも、「新経済・財政再生計画 改革工程表2018」の中で「介護助手」の導入による業務の効率化にふれている。
 この事業においては、「介護人材のすそ野の拡大」や「高年齢者の就労先の確保」に加え、高年齢者が介護の現場にふれることで「介護予防」の意識を高めるという狙いもある。もちろん、何をもってノンコア業務とするのか、そこにコア業務の要素が入ってくるグレーゾーンの部分はないのかなど、検討すべき課題はまだまだ多い。あくまで一例だが、2019年に注目したい動きの一つといえる。

 

 

2019.01.17

 

 

田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。
主な著書に、『2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート』『認知症ケアができる人材の育て方』(以上、ぱる出版)、『現場で使える新人ケアマネ便利帖』(翔泳社)など多数。

 

 

 

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目 次

プロローグ
3年でまたも「大転換」! 介護保険はどう変わる?

第1章
地域包括ケアへ転換する中で見落とせない4つのチェックポイント

第2章
「重い状態の人」への支援はどう変わったのか 【今改定の重点化ポイント①】

第3章
自立支援・重度化防止に向けた具体的な仕掛けとは何か【今改定の重点化ポイント②】

第4章
認知症対応の強化、共生型サービスなど地域の課題を「丸ごと」解決するしくみ

第5章
限られた資源の「適正化」を図る現場にとっては「厳しい」見直しに!

第6章
支え手不足時代に対応する介護保険の「お金」と「人材」の話

巻末チェックシート【改正介護のポイント・早見表】