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    ~消費増税に合わせた施策。その効果は?~

No.3698 介護職の追加的処遇改善2019年10月から
~消費増税に合わせた施策。その効果は?~

● 公費1,000億円を投じた政府の目玉的施策

 

 介護人材不足の解消に向けた「切り札」となるか? 2019年10月の消費増税のタイミングで実施される「介護職員への追加的な処遇改善策」について、厚生労働省の社会保障審議会で大枠が示された。消費増税においては、介護事業所側の仕入れにかかる負担軽減のために過去にも臨時的な介護報酬の改定が行われている。この報酬改定に、今回の処遇改善策も含めるというものだ。これは、政府が2017年12月に閣議決定した「新しい経済政策パッケージ」の目玉と位置づけられる。
 この処遇改善に投入されるのは、公費にして1,000億円。この財源をもって「勤続10年以上の介護福祉士(国家資格取得者)について、月額8万円相当の処遇改善を行う」ことが柱となっている。つまり、一定のキャリアをもつ介護職員を処遇改善のターゲットとすることで、業界全体の「継続的就業とキャリアアップの志向」を高めようという狙いである。これにより、新規人材の参入意欲を高め、人材不足解消につなげようというわけだ。
 ただし、介護業界は介護職員だけで成り立っているわけではない。看護師もいれば、介護サービス調整を担うケアマネジャーもいる。複雑な報酬事務を担う事務職の存在も欠かせない。ちなみに、これまでも介護職員の処遇改善を目的とした施策は設けられているが、上記の職種は対象となっていない。今回の追加的な施策も「カヤの外」になってしまえば、組織全体の給与バランスが揺らぎかねない。
 また、「勤続10年」や「介護福祉士取得」の要件を満たさない介護職員についても、過去の処遇改善策の恩恵を受けているとはいえ、月あたりの現金給与額は全産業平均に比べて8万円ほど少ない。この状態下で、「今回の処遇改善策に該当するまで頑張る」とはいっても、「今の生活」が苦しければ施策による恩恵の実感は得にくいというのが現実だろう。

 

● 複雑な配分方法の中で懸念されること

 

 そこで、「勤続10年以上の介護福祉士」はあくまで一つの基準とし、他の職員の処遇改善にもあてられるよう柔軟な運営を可能とした。問題は、元来のターゲットとなる人材の処遇改善効果が薄れてしまわないよう「柔軟な運営」の範囲をどう定めるかという点だ。そこで、以下のような配分の条件が示された。
 第1に、経験・技能のあるリーダー級の介護職員の中から「月額8万円の給与アップ」もしくは「年収440万円(役職者を除く全産業平均)」を実現できる者を(最低でも1人以上)設定する。第2に、上記の設定者の処遇改善額が、その他の介護職員の2倍以上となるように設定する。第3に、その他の職種(年収440万円以上の者は対象外)は、上記の「その他の介護職員」の処遇改善額の2分の1を上回らないように設定するというものだ。
 「柔軟な運営」とはいいつつ、かなり複雑な縛りとなっているが、特に着目されるのは第1の設定だ。これは、「今回の処遇改善策の効果の体現モデル」を設定するのに等しい。当然、設定された側にはプレッシャーがかかる。審議会では、「現場のチームワークに支障をきたすのでは」という懸念も上がっている。
 もう一つ注意したいのは、公費1,000億円とはなっているが、今回の施策はあくまで介護保険給付の範囲内で行われるという点だ。つまり、利用者側にも1~3割分の負担増が発生することになる。「介護人材不足の解消」という名分は理解できても、しくみが複雑化する中で「納得できる負担増」となるのかどうかが問題だ。今回の施策は1月に開催予定の通常国会の予算委員会でも審議されると思われる。そこでの議論にも注目したい。

 

 

2019.01.31

 

 

田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。
主な著書に、『2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート』『認知症ケアができる人材の育て方』(以上、ぱる出版)、『現場で使える新人ケアマネ便利帖』(翔泳社)など多数。

 

 

 

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目 次

プロローグ
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第1章
地域包括ケアへ転換する中で見落とせない4つのチェックポイント

第2章
「重い状態の人」への支援はどう変わったのか 【今改定の重点化ポイント①】

第3章
自立支援・重度化防止に向けた具体的な仕掛けとは何か【今改定の重点化ポイント②】

第4章
認知症対応の強化、共生型サービスなど地域の課題を「丸ごと」解決するしくみ

第5章
限られた資源の「適正化」を図る現場にとっては「厳しい」見直しに!

第6章
支え手不足時代に対応する介護保険の「お金」と「人材」の話

巻末チェックシート【改正介護のポイント・早見表】