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    ~厚労省も適正化に向けた検討会を設置~

No.3704 不適切なオンライン診療が問題に
~厚労省も適正化に向けた検討会を設置~

● 診療報酬でも評価が拡大されたオンライン診療だが……

 

 ICT(情報通信)技術の進展により、オンラインによる遠隔診療(以下、オンライン診療)の普及が進んでいる。2018年4月の診療報酬改定でも、オンライン診療に関する評価が新設され、大きな追い風となった。
 だが、ここへ来て不適切なオンライン診療が問題として浮上している。2018年12月、全都道府県の衛生主管部局長あてに厚労省医政局から「オンライン診療における不適切な診療行為の取扱いについて」と題した通知が発出された。それによれば、オンライン診療を実施している医療機関において、医師法第20条(※)や2018年3月に厚労省が示した指針(オンライン診療の適切な実施に関する指針)に違反する疑いのある診療行為の実施事例が報告されているという。具体的には、大きく分けて以下の2つのようなケースである。
 1つは、指針に規定された例外事由に該当しないのにもかかわらず、①初診の患者についてオンライン診療を実施しているケース、②直接の対面診療を組み合わせずにオンライン診療のみで完結させるケースだ。
 ①についていえば、厚労省の指針では「初診は、原則として直接の対面による診療を行うこと」としている。例外としては「患者がすぐに適切な医療を受けられない状況にある」ということ。これは、当初のオンライン診療で想定されていた「離島やへき地」の患者を指すと思われるが、この点が拡大解釈されている可能性がある。②については、「対面診療を組み合わせない」ことが許容される例として、「定期的な健康診断等が行われる等により疾病を見落とすリスクが排除されている場合」であるとともに、「治療によるリスクが極めて低いもの」である場合が示されている。こちらも拡大解釈が生じる余地がある。
 2つめは、オンライン診療の手段にかかるもので、情報通信手段としてチャット機能のみを用いた診療行為をあげている。指針では、「リアルタイムの視覚及び聴覚の情報を含む情報通信手段を採用すること」としており、文字のみのチャットは不適切ということになる。これらの不適切事例に対しては、実態を調査したうえで行政による改善勧告が行われる。そのうえで悪質なケースについては、医師法違反などによる罰則も想定される。

 

● 次期診療報酬改定までには、新たな指針が示されることに

 

 ただし、先に述べたように、厚労省が示す指針だけでは今後も拡大解釈が生じる余地がある。そこで、厚労省は2019年1月に指針見直しのための検討会をスタートさせた。この検討会は、2018年12月閣議決定の「新しい経済政策パッケージ」で「遠隔診療について必要なルールを包含するガイドラインの整備」が示されたことによるものだが、タイミング的には、先の不適切事例の根絶を図ることも目的の一つといえる。同検討会の取りまとめは2018年度中が予定されており、2020年度の診療報酬改定までには、より詳細かつ厳格なオンライン診療のあり方が示されることになる。
 だが、今回のような不適切事例が出てくるということは、オンライン診療に対する需要のすそ野が予想以上に拡大している事情もありそうだ。背景として、患者側の医療機関へのアクセス困難な状況(高齢者等の医療機関への移動手段の不足問題など)や診療側の医師不足などもあげられるだろう。こうした多様な課題をにらみつつ、安心・安全な医療とのバランスをどうとっていくかが注目される。

 

医師法第20条…医師は自ら診察しないで治療をしたり、診断書、処方せんの交付等を行ってはならないという旨を記したもの

 

2019.02.14

 

 

田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。
主な著書に、『2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート』『認知症ケアができる人材の育て方』(以上、ぱる出版)、『現場で使える新人ケアマネ便利帖』(翔泳社)など多数。

 

 

 

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第2章
「重い状態の人」への支援はどう変わったのか 【今改定の重点化ポイント①】

第3章
自立支援・重度化防止に向けた具体的な仕掛けとは何か【今改定の重点化ポイント②】

第4章
認知症対応の強化、共生型サービスなど地域の課題を「丸ごと」解決するしくみ

第5章
限られた資源の「適正化」を図る現場にとっては「厳しい」見直しに!

第6章
支え手不足時代に対応する介護保険の「お金」と「人材」の話

巻末チェックシート【改正介護のポイント・早見表】