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No.3709 さらなる厚生年金のパート適用拡大へ

● 106万円の壁よりもさらに低い壁が出現

 

 パートで働く主婦は年収が高くなると夫の扶養から外れます。年収が130万円を超えると自身で社会保険に加入し、厚生年金保険や健康保険の保険料を負担しなければならないため、これが「130万円の壁」と呼ばれてきました。2016(平成28)年10月からは従業員数501人以上の事業所で週20時間以上勤務する等の条件に該当する人は、130万円よりも少ない年収106万円以上で社会保険に加入するようになっており、2017(平成29)年4月からは従業員数500人以下の事業所の一部にも拡大されています。年収106万円でも社会保険に加入する人が出てきたわけですが、今後はさらに低い年収でも加入対象になる可能性があります。

 

● 格差の是正と女性の就業意欲を促進

 

 パート労働者(短時間労働者)の社会保険への適用拡大は、2014(平成26)年4月から施行された「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律」(通称「年金強化法」)に基づくものです。
 パート労働者等の非正規労働者は社会保険の恩恵を受けられないという格差を是正し、130万円の壁に代表されるような「働かない方が有利になるような仕組み」を除去し、特に女性の就業意欲を促進して今後の人口減少社会に備えるという考え方が背景にあります。

 

 この法律に基づいて、まず大規模な事業所で働くパート労働者が対象になりました。2016(平成28)年10月から適用されたのは下記の条件を満たすパート労働者です。

(1)週労働時間20時間以上
(2)月額賃金8.8万円以上(年収約106万円以上)
(3)勤務期間1年以上見込み
(4)学生は適用除外
(5)従業員 501人以上の企業等

 この半年後の、2017(平成29)年4月からは、中小企業であっても上記の(1)~(4)を満たし、労使の合意があれば適用されるようになりました。

 

● 2019年9月までに更なる適用拡大が検討される

 

 段階的に適用拡大されても年収106万円未満で働く主婦は対象外でしたが、今後はさらに低い年収でも社会保険に加入する可能性があります。昨年9月の第4回社会保障審議会年金部会における資料「被用者保険の適用拡大について」(厚生労働省年金局)の中では、「平成31年9月までに更なる適用拡大について検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を実施する」とされています。
 同資料によると、短時間就労を年金給付に結びつけていくことの家計における意義を「寿命の延伸により65歳時点の平均余命は長期化する一方、公的年金の給付水準は今後、マクロ経済スライドによって調整されていくことが見込まれている。こうした中、主たる家計維持者のフルタイム就労だけでなく、女性や高齢者等の短時間就労を厚生年金制度の対象とすることは、個々の家計における報酬比例年金を増やし、老後の所得保障を充実させることにつながる」としています。
 つまり、寿命が延びる一方で公的年金額は減ることが見込まれるので、公的年金の上乗せ部分である厚生年金を増やすことができれば、老後の所得を補うことにつながると期待されているのです。
 月収6.8万円(年収82万円)まで適用拡大される見込みとの報道もありますが、まだ決定はされていません(2019年2月8日現在)。過去には月収5.8万円(年収70万円)も検討されたようです。女性の働き方を左右する可能性もあるので、適用される年収の下限がいくらで決定するかについて引き続き注目していきましょう。

 

2019.02.25

 

 

 

森田 和子(もりた・かずこ)

FPオフィス・モリタ 代表

 

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、DCA(確定拠出年金アドバイザー)
大学卒業後、コンピュータソフト会社、生命保険会社勤務を経て、1999年独立。保険や投資信託の販売をしない独立系のファイナンシャル・プランナー事務所としてコンサルティングを行っている。
お金の管理は「楽に、楽しく」、相談される方を「追い詰めない」のがモットー。情報サイト・新聞・雑誌への執筆多数。企業・学校・イベントで行うマネープランセミナー・講演も好評。

 

FPオフィス・モリタ http://okane-net.com/