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    ~スタートから9か月で約7,500床に~

No.3712 介護保険の新施設「介護医療院」の開設状況
~スタートから9か月で約7,500床に~

● 2024年3月末廃止の介護療養病床の受け皿として間に合うか

 

 厚生労働省が、2018年12月末時点での介護医療院の開設状況を公表した。介護医療院というのは2018年4月に誕生した介護保険対応の新たな施設で、主に医療的な管理が必要な要介護者を対象としたもの。原則として医療法人が設置主体となる。同様の施設として介護療養型医療施設(以下、介護療養病床)があるが、こちらは2024年3月いっぱいで廃止される。いわば、その転換先として設けられたのが介護医療院という位置づけだ。
 今回の公表データによれば、2018年12月末時点で施設数は113、療養床数は7,414となっている。1年でどうなるかを単純に試算すると、約150施設、約9,900床ということになる。さらに、ここから介護療養病床が廃止される2024年3月末までの開設数を試算すれば、約900施設、約5万9,400床となる。
 この数字をどう見るかだが、まずは廃止予定の介護療養病床の施設数と比較してみよう。介護療養病床は、2017年10月1日時点で1,196施設、定員5万3,352人となっている(厚生労働省の2017年度介護サービス施設・事業所調査より)。ここから介護医療院に転換するとして、施設数を満たすのは厳しいとしても現状の定員数をまかなうことはできそうだ。

 

● 実態は、介護療養病床のみならず医療療養病床からの転換も

 

 だが、今回の公表数値で注意したいのが、介護医療院の開設が介護療養病床からの転換だけではないということだ。まず、介護保険では、他に介護療養型老人保健施設(以下、療養型老健)からの転換がある。老健は重点的なリハビリなどを行うことで在宅復帰に力を入れた施設だが、一方で療養状態によって手厚い医学的管理が必要な入所者もいる。そうした入所者を主に受け入れるのが療養型老健だが、2018年度の介護報酬改定で報酬体系が簡略化され、より重度の療養対象の区分が廃止された。つまり、より重度の要介護者の受け皿として介護医療院への転換圧力が強まったことになる。この転換が27施設、1,722床。開設された介護医療院の23%におよぶ。
 さらに、介護保険ではなく医療保険対応の病床からの転換も含まれている。具体的には、医療保険対応の療養病床(以下、医療療養病床)。この転換数が33施設、1,067病床。介護医療院全体のうち、施設数で29%、病床数でも14%にのぼる数字となっている。
 こうして見ると、2024年3月末に廃止される介護療養病床の完全な受け皿となるかどうかは怪しくなる。そこで注目したいのが、やはり2018年度の介護保険の基準改定で介護付き有料老人ホーム(以下、介護付き有料)の人員・設備基準が一部緩和されたことだ。具体的には、介護療養病床等(医療療養病床も含む)から「医療機関に併設する形」で介護付き有料に転換する際、併設する医療機関との人員の兼務や設備の共用を認めている。「医療機関併設型」の介護付き有料も、介護療養病床からの転換先誘導が図られたわけだ。
 注意したいのは、医療保険対応の病床も介護医療院や医療機関併設型の介護付き有料に転換するとなれば、それまで医療保険でまかなっていた部分が介護保険に付け替えとなること。これが「介護保険の財政を圧迫する」となれば、財政上の問題から介護保険の他サービスが報酬減などのしわ寄せを受ける可能性も出てくる。2021年度に向けた介護保険の見直し議論にどのような影響がおよぶか、今後の介護医療院等の開設状況に注目したい。

 

2019.02.28

 

 

田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。
主な著書に、『2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート』『認知症ケアができる人材の育て方』(以上、ぱる出版)、『現場で使える新人ケアマネ便利帖』(翔泳社)など多数。

 

 

 

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目 次

プロローグ
3年でまたも「大転換」! 介護保険はどう変わる?

第1章
地域包括ケアへ転換する中で見落とせない4つのチェックポイント

第2章
「重い状態の人」への支援はどう変わったのか 【今改定の重点化ポイント①】

第3章
自立支援・重度化防止に向けた具体的な仕掛けとは何か【今改定の重点化ポイント②】

第4章
認知症対応の強化、共生型サービスなど地域の課題を「丸ごと」解決するしくみ

第5章
限られた資源の「適正化」を図る現場にとっては「厳しい」見直しに!

第6章
支え手不足時代に対応する介護保険の「お金」と「人材」の話

巻末チェックシート【改正介護のポイント・早見表】