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    ~当事者の社会参加支援や基本法制定など~

No.3720 認知症施策をめぐる新たな動き
~当事者の社会参加支援や基本法制定など~

● 認知症者700万人時代に向けた国の対策

 

 いわゆる団塊世代が全員75歳以上となる2025年には、認知症を発症する人は約700万人──この推計値は、近年頻繁に取り上げられている。そのうえで着目したいのは、すでに2012年時点で「認知症およびその予備軍」が850万人をこえているという数字だ。割合的には、65歳以上の高齢者の4人に1人にあたる。この場合の「予備軍」というのは、軽度認知障害(MCI)と呼ばれ、時間経過とともに認知症に移行する可能性が高い状況を指す。「自分が近い将来、認知症になるかもしれない」という可能性を含め、いまや認知症は国民的な当事者課題となっている。
 そうした中、国は2012年に認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)を策定。2015年には施策目標を抜本的に見直し、認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)を取りまとめ、介護保険法等の改正により、新たな対応策と次々と打ち出している。たとえば、認知症では集中的な初期対応が重要とされるが、これを具体化した認知症初期集中支援チームが、2018年度から全市区町村に設けられた(初期のオレンジプランでは全国展開は検討にとどまっていた)。また、やはり全市区町村に認知症地域支援推進員という地域支援体制を司る人員を配置し、その推進員の企画によって認知症カフェなどの資源整備も進んでいる。

 

● 2019年度予算に追加された当事者視点の施策

 

 こうした地域単位での取組みをさらに進めるべく、2019年度予算(3月6日現在、参議院で審議中)では、新たな施策の枠組みも登場している。中でも注目したいのが、認知症当事者の視点を反映させた以下のような施策だ。1つは、市区町村が手がけている地域支援事業(介護保険の財源をベースとした事業)の中に、本人の社会参加活動のための体制整備を位置づけたことだ。たとえば、農業や商品製造、洗車、多様な地域活動などに認知症の当事者がかかわりつつ、社会参加を目指していくとする。これをサポートすべく、行政が受入れ先の農業生産者や企業とのマッチング等を図っていくというものだ。もう1つは、先の新オレンジプランの中に、認知症本人のピア活動の推進を位置づけたことだ。どのような活動かといえば、認知症の人同士が集まって、自分たちの直面する地域課題の解決に向けて話し合ったり、情報発信、当事者同士のサポートを進めていくというものだ(「本人ミーティング」といわれる)。

 

● 2019年初頭国会で認知症基本法の制定も

 

 ちなみに、こうしたピア活動などから発信される認知症の人の支援ニーズに、認知症サポーターをつなげていくという取組み(仮称:チームオレンジ)の構築も図られている。認知症サポーターとは、地域住民や小中高生、企業の社員など幅広い人々を対象に、認知症にかかる基本的な知識や対応法を「認知症サポーター養成講座」で学んでもらったうえで、受講・修了者をサポーターと認定するしくみ。現時点で全国に1,100万人のサポーターがいる。数的には膨大だが、問題はそうした人々に養成講座後にどうやって活躍してもらうかという点にある。その一端として定められたのが先のチームオレンジだ。
 こうしたさまざまな取組みが進む一方で、施策に横軸を通す法整備はまだ途上といえる。これについても、2018年から動きが見られる。それが、議員立法による認知症基本法の制定に向けて与党内で調整が進んでいる点だ。6月までの会期が予定される今通常国会への法案提出が目指され、与党・公明党が昨年9月に取りまとめた骨子案には、当事者団体などから追加的要望なども寄せられている。今国会の動きに注目してみたい。

 

2019.03.14

 

 

田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。
主な著書に、『2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート』『認知症ケアができる人材の育て方』(以上、ぱる出版)、『現場で使える新人ケアマネ便利帖』(翔泳社)など多数。