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    ~2017年度高齢者虐待の実態調査より~

No.3734 介護職員等による虐待、初の500件超え
~2017年度高齢者虐待の実態調査より~

● 施設職員等による虐待は2006年度から10倍

 

 2006年度の高齢者虐待防止法(高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律)の施行時から、厚労省は毎年度高齢者虐待に関する実態調査を行なっている。これは、市区町村・都道府県に寄せられた通報・相談、それにともなう自治体側の対応状況を調査したものだ。その最新調査となる2017年度の結果が3月26日に公表された。
 対象となるのは、①(介護施設など)養護施設の従事者による虐待、②(親族など)養護者による虐待の2つ。いずれも、相談・通報件数、虐待判断件数(自治体が虐待と判断した件数)ともに右肩上がりとなっている。虐待問題は、児童虐待やDVなどを含め社会的関心が高まっており、相談・通報および判断の各件数を押し上げている一因という指摘もある。だが、そうした要因があるにせよ、特に①の著しい増加傾向は看過できない。
 ①の養護施設従事者等による虐待は、相談・通報件数で1,898件、判断件数で510件。判断件数は調査開始以来、初めて500件を超え、調査初年度の2006年度から10倍近い伸びを記録している。件数自体は、②の相談・通報件数3万40件、判断件数1万7,078件に比べれば、ごくわずかに過ぎない。しかし、世帯の高齢化や核家族化で施設入所や居住系サービス利用のニーズが高まる中、社会保険事業にも従事する者からの虐待の急増は、大きな社会不安を呼び起こすことになりかねない。

 

● 「評判いい施設」でも虐待リスクあり!?

 

 虐待の内容については、身体的虐待(暴力的行為や高齢者の利益にならない強制による行為など)が59.8%、心理的虐待(威嚇的・侮辱的な発言・態度、高齢者の存在や行為を否定・無視するような発言・態度など)が30.6%、介護等放棄(必要とされる介護や世話を怠り、高齢者の生活環境や身体・精神状態を悪化させる行為など)が16.9%となっている。少ないながら、性的虐待(3.3%)、経済的虐待(8.0%)もあがっている。
 身体的虐待が際立つのは、身体的に外傷が残るなど虐待として発見しやすい要因もある。逆に言えば、心理的虐待は数字以上に多いことも想定される。なお、対前年度比で心理的虐待が3%近く伸びているが、これは主たる通報者である「その施設の他職員(23.2%)」の「何をもって虐待と認識するか」という意識向上や、「家族・親族(20.9%)」の権利意識の拡大などが影響していると思われる。
 一方、虐待の影響にかかる深刻度を見ると、「生命・身体・生活に著しい影響、および重大な危険」がおよんでいるケース(つまり、深刻度が高いもの)の割合は31.0%。虐待判断件数が400件を超えた2015年度からの3年間で、少しずつ上昇の兆しを見せている。件数の上昇もさることながら、いったん発生した場合の被虐待者にかかる影響の大きさにも注意を払う必要があるだろう。
 ちなみに、虐待判断がなされた施設等のうち、過去に「虐待あり」とされたケースのほか、事故報告、自治体による苦情・虐待通報対応などがなされたケースなどの割合は3割におよぶ。「さもありなん」ということだが、問題はそうした「過去に問題あり」のケース以外が7割におよぶこと。「問題発生がない・評判がいい」といった施設でも、いつ虐待事例が発生するかわからないという状況が問題の深さを表わしているといえる。

 

2019.04.11

 

 

田中 元(たなか・はじめ)

 介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。
 主な著書に、『2018年・改正介護保険のポイントがひと目でわかる本』『認知症のお客様対応マニュアル』(以上、ぱる出版)、『現場で使えるケアマネ新実務便利帳』(翔泳社)など多数。

 

 

 

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【ポイント1】
職員同士のやりとりに注意

【ポイント2】
排泄関連をチェック

【ポイント3】
記録開示が重要な責務かどうかを認識している

【ポイント4】
重要事項説明書で必ずチェックしたいこと

【ポイント5】
スタッフ教育の情報が公開されているかを確認

【ポイント6】
職員に「ちょっと待ってね」のセリフが多い場合は要注意!

【ポイント7】
用具・福祉機器の扱い方でサービスの質が計れる

【ポイント8】
事務職が「現場の状況」をよくわかっているか

【ポイント9】
見守りの仕方・立ち位置が事故・トラブル防止の基礎になる

【ポイント10】
管理者が服薬や医療処置を理解しているか

 
目 次

プロローグ
【情報収集の手段を知る】知りたい情報を素早く手に入れる方法

第1章
イラストでわかる介護サービスを選ぶポイント【選び方の基本10カ条】

第2章
わが家を中心として受けるサービス

第3章
住み替えや施設入所で受けるサービス

第4章
介護保険の給付外で注目したいサービス

[巻末ガイド]チャートでわかる・介護サービス早見表