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相続時精算課税の活用で自社株評価額上昇の
影響を回避する
マネーコンシェルジュ税理士法人 代表社員/税理士 今村 仁
■ 事業承継で一番多い相談?
  中小企業の事業承継にまつわる相談事で一番多いのではないかと思うのが、「自社株の評価が高いのですがどうしたらいいでしょう?」という、自社株の評価引き下げ対策に関するものです。
  前回も書きましたが、中小企業の未上場株式というのは、実質的に換金不可であるにもかかわらず、社歴が長く業績が良い会社を中心に、相続税を計算する上での株価が高騰しがちです。株式額面に対してその100倍以上となっているケースもあり、もし相続が発生すれば、高騰した株価に基づく相続税を原則としては10ケ月後に現金一括納付しなければなりません。
■ 自社株評価額上昇の回避方法の1つ「相続時精算課税制度」
  中小企業の株価が上昇していく理由は様々ありますが、主には、会社の税引後利益が純資産にオンされていき内部留保が厚くなるからです。経営者の立場としては、当然に会社でより多くの利益が計上できるように努力していくことかと思いますが、一方、事業承継対策ではそのことによって会社の株価が上昇し、更に承継を困難にしてしまっているのです。
  会社で儲けていくとそれが裏目に出るとは、何とも納得がいかないと感じられるかと思いますが、それを回避するための税制も整備されており、その1つが、「相続時精算課税(贈与)制度」です。
  この制度では、2,500万円の基礎控除があり、それを超える場合には一律20%の税率で贈与税をいったん支払うことになっています。その後、贈与者(親)が死亡した場合には、その贈与がなかったものとして贈与財産を親の相続財産に足し戻し相続税を計算し、事前に支払った贈与税を差し引くことになります。
■ 相続時精算課税制度のメリット・デメリット
  贈与しても相続税で再計算されるのであれば意味がないのでは?と思われるかもしれませんが、この制度で注目したいのは、相続時に足し戻される贈与財産の評価は「贈与時点の評価額」となっている点です。
  業績が良く今後も利益が積み重ねられていくことが予想される優良会社であれば、この相続時精算課税制度を活用して、例えば親から子(後継者)へ親の生前のうちから自社株を贈与しておけば、親の相続時の再計算においては贈与時点の株価を使うことができる、つまり高騰した相続時の株価よりも低い評価額で取り扱われるのです。
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