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第134回
企業年金の視点で見る共済年金の職域加算部分
社会保険労務士 桶谷 浩
●「厚生年金・共済年金一元化法案」を閣議決定
  野田内閣は4月13日、会社員の厚生年金と公務員の共済年金の「一元化法案」を閣議決定しました。民間会社員のための厚生年金とは別に、公務員のための国家公務員共済および地方公務員共済、私立学校の教職員のための私学共済が あることはご存じでしょう。そして一般に年金の「2階部分」と言われる厚生年金と共済年金のしくみは似ていますが、共済年金のほうが有利な部分が多いということもあちこちで報道されており、ご存じかと思います。
  特に「転給制度」というのは、共済年金の優遇を語る上で今まで随分と取り上げられたところです(転給制度とは、たとえば公務員の夫が死亡した時、妻に遺族共済年金が支払われますが、夫が生前に仕送り等で自分の父母の生活の面倒を見ていた場合、その妻も死亡すると権利が夫の父母に移るという制度です)。その他にも細かな違いが種々あるわけですが、一元化法案が通ればその差がなくなります。また保険料についても最終的には厚生年金の保険料と同一になります。
●半歩前進なのですが
  厚生年金と共済年金の2階部分が全く同じになり、保険料率も同じになると現在よりも官民格差はあきらかに縮小されるわけで、その意味では前進という言葉に間違いはありません。しかし、共済年金には「3階部分」という職域加算による独自の上乗せ部分があります。今回は改正の具体策には触れず持ち越しとされたため、各所から「官民格差の是正が中途半端である」と批判されています。
  一元化法案が国会を通過するか否かは現時点ではわかりませんが、仮に成立したとしても先送りされた3階部分をどうするかは、近い将来決めないといけませんし、否決されてもずっとこのままという訳にもいきません。世間から共済年金の職域加算(3階部分)に対して批判が集まっていますが、私にはどうも論点が少しずれている気がします。
  一般に共済年金の3階部分(職域加算)」に相当する厚生年金の3階部分は「企業年金」と言われていますが、その企業年金的視点でこの問題を考えてみましょう。
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