Home > 税と社会保障 > 知ってビックリ!年金のはなし

第135回
社長さん、その給与の設定は正しいですか?
社会保険労務士 桶谷 浩
●年金ももらいたい社長の給与を決めるのは難しい
  同業の社労士から、「60歳を過ぎた社長さんの給与設定をどうしたらよいか?」という相談が舞い込んできました。
  ご存じのように、60歳になれば(今年60歳になられる方は)、年金の請求手続きを行い、特別支給の老齢厚生年金を受け取り始めます。同時に会社の社長さんは70歳まで厚生年金に加入する義務がありますから、年金をもらいながら同時に厚生年金に加入し保険料を支払うことになります。
  さてこの場合、社長さんの給与をどう設定するかというのはなかなか難しい問題です。
  賃金規定等により給与額がある程度機械的に定められてしまう従業員と違って、社長の給与はそれこそ「いくらでも自由」なのですから逆に決めづらいわけです。
  業績のよい会社は話が楽です。年金は全額停止になってもかまいませんから、70万円でも100万円でも、税金的に最も有利になるように顧問税理士等と相談された上で好きな額の給与を設定すればよいでしょう。年金のことは頭の中から取り除いていただいても結構です。
  問題は、会社の業績が思わしくなく、代表者とはいえ安めの給与にしないといけないとか、定年後の起業でこぢんまり商売をするので、最初から役員報酬を安くしたいとかという場合です。年金が支給停止になるか否かは給与額次第で、とても安ければ年金は全額出ますが、年金+報酬=28万円を超えると調整対象という在職老齢年金の仕組みを考慮しなければならないため、年金が月額10万円だとすると報酬月額18万円辺りからは頭を悩まさなければいけなくなります。
●標準報酬月額等級表が抱える盲点
  60歳〜65歳までの間に受ける年金額の調整(在職老齢年金)に使われるのは、年金(受け取る年金のうち加給年金等を除いたもの。最近年金を受け始めた人の場合は年金額全額)と給与です。
  厚生年金や健康保険では報酬を換算する場合に実額を使うのではなく、標準報酬月額を使います。ある一定の範囲内にある金額(たとえば29万円以上31万円未満)は画一的に給与を所定の額(この場合は30万円)とみなすという仕組み(標準報酬月額等級)です。同じ範囲内であれば、給与29万円も30万9,000円も等しく報酬が30万円とみなされ、保険料も在職老齢年金の調整もその額で計算されます。
  そんな基本的なことは知っている。そうおっしゃるかもしれません。でも頭で理解していることと実際は違うのです。具体例で見てみましょう。
※ これ以降は会員専用ページです