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第137回
ねんきんネットを利用するうえでの所感
社会保険労務士 桶谷 浩
●パソコンに慣れた世代は年金への関心が薄く、
   年金への関心が高い世代は操作に不慣れな現状
  日本年金機構では、年金に関する情報をインターネットで閲覧できる「ねんきんネット」を運営しています。最近、この活用の宣伝があちこちでされています。
参照:http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201105/2.html
  今年度からねんきんネットで「ねんきん定期便」で送付される情報を閲覧できるようになり、より便利になりました。厚生労働省、日本年金機構としては、紙ベースのねんきん定期便より将来はこちらをメインにしたいのではないかと思えるほどの力の入れようだと私には見受けられます。実際のところ、「紙ベースからネットベースに移して経費の節減を図りたい」旨は文章で明記されています。
  私もねんきんネットを使ってみました。使い方の詳細には触れませんが、事前登録(本人情報やパスワード設定等の準備)をした後、ログインして実際に情報を見るという一連の流れは、会員登録等を必要とするサイトを利用した経験のある人であれば、特に難しいというほどではないと思います。
  とはいえ、インターネットに慣れた若い人は年金への関心が薄く、最も年金に関心がある層がパソコン等情報機器の利用に苦手意識を持つ50代以降の女性であるという状況を考えると、利用が広まるのにはまだ時間がかかるでしょう。
  ねんきんネットを利用すると、ねんきん定期便(節目年齢の詳細版)に掲載される内容以上の詳細内容が最も新しい状態でパソコン上に表示されます。とても便利なツールですが、細かく見ていくといろいろと問題を感じるところもあります。
●もっと内容を充実させてほしい
  現在、私は非常に親しい知り合いで働きながら年金を貰っている方から、在職老齢年金の確認を依頼されています。
  その方は、遺族厚生年金と老後の年金(老齢厚生年金)と2つの権利があり、かつ60歳を過ぎて在職中で老後の年金に調整がかかっていらっしゃる方です。調整のかからない状態であれば、老後の年金を受け取るほうが良いのですが、老後の年金に調整がかかり遺族年金のほうの額が多くなるなら遺族年金を受け取るほうがよい、つまりどちらの年金を選択すれば有利なのか微妙な方なのです。
  昨年の厚生労働省の発表では、在職老齢年金の調整額の計算もねんきんネットで見られるようにするという話がありましたが、現在のところ対応はまだのようです。在職老齢年金の調整額の具体的な計算は多くの受給者が関心を持っていますし、現実に給与と賞与(直近1年)と年金額がわかっても、全くの素人では対応できませんので、ぜひネットのほうで対応して欲しいと思います。
  在職老齢年金の調整額のこと以外にも、もっと60〜65歳の一番年金に悩まれる層に対してケアが行き届くような内容を増やせば、おのずとねんきんネット利用者が増えていくのではないでしょうか。
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