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第138回
雇用保険(基本手当)と年金の話
社会保険労務士 桶谷 浩
●以前は選択に悩むこともあった…
  今年度中に60歳になられる方で、ずっと会社勤めだった方は、60歳を過ぎると年金の権利が発生します。さらに、その方が65歳になるまでの間に退職した場合は雇用保険を受け取る権利も発生します。このように、年金の世界では(他の制度も含めて)同時に2つの権利が発生することがあります。
  この場合はどうなるのか、結論から先に言うと「雇用保険(基本手当)」が優先します。金額の多寡は関係なく、仮に雇用保険が少ない場合でも雇用保険の支給が優先され、年金は停止されます。
  一方が必ず優先されるという仕組みは厳密に言うと選択という形にはならないのですが、雇用保険の手続きをしなければ年金が支給されるという事です(雇用保険の権利があっても請求しないという方法で実質年金を選択できるため、ここは選択という言葉を使っても間違いではありません)。
  「あれ、年金のほうが雇用保険より受け取る金額が多い場合なんてあるのか?」と思われるのは現在60歳になられる方の感覚です。昔の60歳から65歳になるまでの間に定額部分がある時代(昭和24年4月1日以前生まれ)の方ですと、定額部分を受け取る年齢から後に退職をした場合は、「雇用保険と年金の支給月額が同じくらいか、雇用保険の方が少ない」ことも珍しいことではありませんでした。
  私の知っている方でも、年金相談会で相談をして、雇用保険の給付が年金より少ないことが判明し、家に帰る前にあわててハローワークに立ち寄り、雇用保険支給の前提となる休職の申込を取り消された方もいらっしゃいました。
  もちろん、純粋に金額だけではなく、手続きの煩雑さなどを加味される方が多いのも事実です。年金のほうが支給額がわずかに少ない場合でも、あるいは年金のほうが税金がかかり額面ではなく手取り支給額が少なくなる場合(雇用保険の給付は非課税の場合)でも、その程度の差ならと年金を選ばれる方も沢山いらっしゃいました。また、雇用保険は次の仕事を探すための生活保障であるのが大原則ですから、給付を受けるためには、4週間に1度指定された日にハローワークに行き失業の認定を受け、かつ形式的な形とはいえ求職活動をしなければならないというのはやはり面倒な事なのでしょう。
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