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第140回
算定基礎届と年金に関するアドバイス
社会保険労務士 桶谷 浩
●算定基礎届の提出期間が終わったところですが…
  会社にお勤めの方はご存じかと思いますが、日本年金機構では事業主から提出された算定基礎届という届出により、9月から8月までの1年間の年金保険料(および健康保険料)の計算の基となる報酬の確定作業を行います。
「被保険者の標準報酬月額は、実際に受けた報酬にあわせて毎年9月に決定し直されます。事業主は、7月1日現在で使用している全被保険者の3か月間(4〜6月)の報酬月額を「算定基礎届」により届出します。決定し直された標準報酬月額は、原則1年間(9月から翌年8月まで)は固定され、納めていただく保険料額の計算や将来受け取る年金額等の計算の基礎となります。」(日本年金機構ウェブサイト)
  今年の提出時期は終了したわけですが、この書類については、いろいろとネットやマスコミ、その他で触れられていることもあるため、もう少し深く突っ込んでFP的注意点を考えてみましょう。
●基本は4、5、6月の給与
  FPの皆さんならもうご存じかと思いますが、対象となるのは、4、5、6月分の給与です。この給与の平均を標準報酬月額表のランクの中に当てはめて、9月からの標準報酬月額を確定し、年金保険料額を決めることになるわけですが、よく話題にされるのは、「残業代も込み」「交通費も込み」という点です。
  つまり給与が同じでも、4、5、6月に残業が多いと「報酬が高い」ことになり、残業がないまたは少ない場合は「報酬が低い」ことになります。その数字が9月からの向こう1年の賃金としてみなされて保険料が決まるという、面白い題材です。
  また、交通費(非課税交通費)の取り扱いも全く同じで、上記の報酬の中に入ります。給与20万円で徒歩通勤(交通費ゼロ)の人と遠方で定期代が2万円かかる人では、後者のほうが報酬が高く、厚生年金と健康保険の保険料が高いのです。
  これらは、算定基礎の事務や標準報酬月額というしくみを理解するうえでは大変有用です。興味を引く題材なので、多くの社労士やFPの方がいろいろな場面で取り上げ、解説されています。
  しかし実務的には「給与を上げ下げしたり、残業を従業員に指示したりする権利のある会社の経営者」にしか説明してはいけないと思います。一般の従業員にとって「給与の額は会社が決めるもの」ですし「残業をするかしないか、する場合でもどのくらいやるか」を決めるのは会社であって、本人はその決められたことに従うしかないのです。交通費だって、通勤時間が長くてきついから引っ越すということがあっても、厚生年金や健康保険料が安くなるからという理由で引っ越すということはないでしょう。
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