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第145回
「社会保険料、何とか安くなりませんか?」
社会保険労務士 桶谷 浩
● 社会保険料は高い?
  厚生年金と健康保険を併せて、働いている者の社会保険料自己負担額はおおよそ14%、高すぎると不満も多いでしょう。確かに給与1万円につき1400円程度を差し引かれるのですから、普段から高いなあと思われてもおかしくはありません。
  ただ、従業員の場合は、健康保険は病気やケガをした時に利用しますし、年金保険料は老後になって「厚生年金となって」戻ってきます。だから払う意味があり医療費の高騰や老後不安の面からも被保険者なら納得される方も多いのですが、保険料を折半する会社の経営者としては、一方的な持ち出し感がとても強いのか、社長さんと話していると時々「何とかならないか」と愚痴をこぼされます。
  もちろん、社保完備(厚生年金・健康保険加入)は、正規に働く側からしたら当然のことで、逆に会社として加入義務があるのに加入させないというのはどこかに怪しい所のある会社ではないかという悪いイメージがつきまとい、優秀な人材を獲るという面ではマイナスになります。また企業は社会的な責任を負うという面からも企業イメージを大きく損なう等、きちんと手続きをやらない事による「お金に換算できないマイナス面」が現れますから、大抵の経営者さんはぶつぶつと言いながらも保険料を負担されます。法人であれば加入は義務なのですからしかたがありません。
● それでも“合法的”に何とかしたい
  一度、「自分の気にいっている社員だけ」社会保険に加入させたいというトンデモないことを言う社長さんとお会いしましたが(即お断りました)、違法行為はしたくないが、「合法的な手段が何かあれば、なんとかして少しでも保険料を浮かせたい」そんな事を考えていらっしゃる経営者さんは少なくありません。
  実際のところ、そんな例もいくつかあります。
  古典的なものが「月末退職予定の社員を1日前に退職させる」というもの。これは結構有名なやり方です。
  社会保険料に関しては日割計算ではないので退職日が、たとえば10月の1日〜30日の間の退職であれば10月分の保険料は必要ありません。月末(31日)退職であれば翌日(11月1日)資格喪失となりますので、10月分の保険料が必要となります。
  ただし、退職日を決めるのは基本的に従業員。月末で辞めたいと言っている者を説得して30日退社に持ち込むというのは、いかがなものでしょう。
  しかも、浮くのは1カ月分の会社負担の保険料のみ。それで後になって「そんな話は聞いていない」とか「年金定期便の記録を見たら月末退職のはずなのに10月が厚生年金に入っていないのでおかしい」と抗議を受けたらどうしようもありません。在職の社員と違って退職者に遠慮はありません。
  1カ月の会社負担料節約のために後々トラブルの種を残します。受ける保険料節約のメリットに比べてリスクがとても高くなります。
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