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第148回
貰いすぎ年金、ようやく正常化へ
社会保険労務士 桶谷 浩
● 年金額の貰いすぎが解消されます
  過去の特例措置で、高齢者が本来よりも高い公的年金を受け取っている「貰いすぎ年金」を来年10月から段階的に解消することが決まりました。年金減額を盛り込んだ改正国民年金法が11月16日に成立し、これで負の遺産であった「貰いすぎ」の解消が図られることになります。
  マスコミ報道によれば、平成12年度から現在までの間に本来の水準と比較して7兆円の過払いが生じており、さらに、過払いから本来の水準に戻すのに平成27年度まで3年かかり、その間に負担しなければならない分が新たに2.6兆円生じ、合計すると9.6兆円が本来の法律の定める額に比較して払いすぎになるとのことです。
  貰いすぎの解消は、
      平成25年10月 ……… 1%減額
      平成26年 4月 ……… 1%減額
      平成27年 4月 ……… 0.5%減額
のスケジュールで行われ、これに別途、前年物価の変動分が加味されます。
  最初は近い将来に物価が上がればこの凍結措置による貰いすぎは解消がされるから大丈夫だという極めて甘い考えで始めたものでしたが、残念ながらその後の物価については皆さんご存じの通りずっとデフレ基調で、ついぞ解消することはありませんでした。
● 始まりは選挙対策から…
  本来公的年金は、物価が上がれば上がる(マクロ経済スライドが発動されると完全にはそうとはなりませんが)、下がれば下がるというのが原則です。最近はデフレ基調でマイナス面ばかり強調されますが、インフレ時に受取額の目減りが少なく、そこが民間の年金商品に比べて安定性があるというのが公的年金の圧倒的メリットですから、年金が下がるしくみを政治家が丁寧に説明すれば理解を得られたはずです。
  ですから物価下落分の凍結は整合性が取れなくなるため避けるべきでした。しかしあっさり平成12年にそれをやってしまい、それどころか平成13年も14年も続けて年金額を下げなければいけないのに下げないできたのです。
  確かに年金額は、高齢者が興味と関心をもつものです。政治家の政策には、国民の支持すなわち「選挙のこと」がちらつき、プラスになることはすぐに実行するもののマイナスになる方策はなかなか実行しづらいという傾向をもちますが、その悪い面が出てしまったようです。
  物価スライドを反映させない措置をした後でも、当面デフレっぽいなと思ったら、早めに解消する対策を講じればよかったのでしょうが、そのままずるずると10年も放置されてしまったのです。
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