|
未だに年金記録問題を誤解している人がたくさんいらっしゃいます。「公的年金制度は当初からでたらめな制度でとんでもない状態であった」と。
しかしそれは正しくありません。そもそも当初の年金の仕組みは、記録漏れがあるのが前提の上のものでした。というより漏れを防ぐ手立てがなかったのです。
今更ですが改めてちょっと振りかえってみましょう。厚生年金は1942(昭和17)年、国民年金は1961(昭和36)年から始まりました。当時のコンピューターの利用状況はどうだったでしょうか?
 全く使われていなかったはずです。性能的な問題もあり、そういう便利なものを使って管理する時代ではありませんでした。では実際の管理はどうしたのでしょうか?
当然ですが、紙の台帳に記録をします。そしてその記録はどこにあるかというと、勤め先の住所地の社会保険事務所(当時)です。
ある人が入社から定年まで転職をせずに働いていれば問題はありません。しかし、諸般の事情で退職・転職・引っ越しを繰り返すのは普通のことです。
その時、新しい就職先に以前からの年金手帳(あるいは厚生年金の被保険者証)を会社に持参し、その番号を継続して使うならば問題ないのですが、そうでない場合、会社は処理に困ります。
「そんな大切な物はみんな失くさず持っているだろう」なんて思わないでください。今でも、会社の人事労務の現場では、転職・採用時に「年金手帳や前職の雇用保険の被保険者証を持ってきてください」と言っても、「どこに行ったかわからない」なんていう人が少なからず居るのが現実です。従業員に期待することはできません。
今は氏名と生年月日、前職等の履歴データがあれば、簡単にコンピューターで検索ができますから問題にならないだけです。
検索ができない時代であれば、新しい番号を振り、新しい手帳を作るしかなかったでしょう。機械化以前においては、よほど本人がしっかりしていないと記録漏れのリスクがあるのは当たり前のことでした。25歳で転職する人に30年、40年先に貰える年金のことを考えろと言っても無理な話でした。
|
|