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第155回
厚生年金61歳支給開始で「同日得喪」が問題に!?(前編)
社会保険労務士 桶谷 浩
● 同日得喪って、なに?
  社会保険(健康保険・厚生年金)に関する用語で、「同日得喪」(どうじつとくそう)という言葉がありますが、読者の中には聞いたことがある方もいるかと思います。読んで字のごとく、1日の空白もなく社会保険の被保険者の資格取得と資格喪失が連続して起こることを指すように思えます。
  しかし、A社で3月31日まで在籍しB社に4月1日に転職した場合、3月31日までA社での社会保険の被保険者で、4月1日に資格喪失をし、同時に4月1日に資格取得をしていますので、いかにも同日得喪という言葉に該当しそうですが、この場合は同日得喪とは言いません。一般に同日得喪というのは、同じ会社で働いていて、同じ日に退職による資格喪失(月末退職の場合、翌日1日が資格喪失日となります)と雇用が発生している場合の保険料の計算の特例のことを指します。
  ただ、普通に考えると「同じ会社で働いていて日を1日も空けずに退職と雇用が続くってことがあるのか?それは資格喪失(退職)とは言わないだろう?」と疑問に思う人もいるでしょう。
  3月31日に退職し、何かの理由があって暫く期間が開いて4月15日から出戻ったということなら納得できるでしょうが、「同じ会社で3月31日に退職して4月1日から再度雇用されるのを、『離職』+『再就職』として処理するのはおかしいんじゃないの?」と考えるのが普通です。
● 同日得喪は定年退職と年金が絡んでくる
  確かに、おかしいことは間違いありません。「実際にその人は辞めていない」のですから。
  もしこんなことが安易に認められるならば、たびたび離職再雇用を繰り返す悪質なケースが出てくるかもしれません。
  社会保険の保険料は、定例の申告時点以外の時期に大幅な変動をした場合に、月額変更届ということで変更の届出を出しますが、それには固定的賃金の変動が3カ月続いた後にという条件が付いています。
  たとえば、3月に給与が41万円だった人が4月から20万円となった場合、
4月 41万円を基準に保険料を計算
5月 41万円を基準に保険料を計算
6月 41万円を基準に保険料を計算
7月 20万円を基準に保険料を計算
となります。会社の資金繰りが苦しく、従業員の賃金をたとえば4月に下げたとしても、反映されるのは7月で、保険料は労使折半ですから3カ月分までは会社も従業員も高い保険料を負担しなければなりません。
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