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第156回
厚生年金61歳支給開始で「同日得喪」が問題に!?(後編)
社会保険労務士 桶谷 浩
● 支給開始年齢が繰下げになって同日得喪は不要になった!?
  すでにご存じのことと思いますが、今年(平成25年)4月2日以降60歳になられる男性については、特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢が61歳(以降順次年齢に応じて62、63歳…)に繰り下げられました。
  ここで困ったことが起こったのです。
  今までは、60歳になったら厚生年金の受給権が発生し、特別支給の老齢厚生年金がもらえました。ですから、前編で触れた同日得喪をする意味があったのです。しかし、これから60歳を迎える人は、仮に定年になったとしても年金開始までに空白の期間がある人たちとなります。その人たちにとっては、60歳の定年の時点で継続雇用となり給与が大幅に下げられてもすぐに年金がもらえないため、在職老齢年金の額を考える必要が一切なくなります。つまり、「同日得喪をする意味」がほとんど無くなってしまったのです。
  そうであれば、同日得喪という例外的な規定を元通り(理屈通り)にして、「60歳時点では同日得喪という特別な処理をしなくて良い」という取扱いにしてもよいはずです。事実、何もなければそうなるはずでした。
● 年金に関係なく60歳からは同日得喪OKに
  ところが、厚生労働省は最近になって、「60歳以上の者で、退職後継続して再雇用されるものについては、使用関係が一旦中断したものとみなし、事業主から被保険者資格喪失届及び被保険者資格取得届を提出させる取扱いとして差し支えないこと」という事務取扱いの変更を日本年金機構に連絡しました。
  つまり、老齢厚生年金を受けているかどうかにかかわらず、「60歳を過ぎた場合」で、「定年」や「定年後の有期再雇用の満期継続」があって給与が激変した場合にも、従前通り同日得喪という仕組みを使うことを認めたのです。
  ところが、そこにはちょっと微妙な問題が含まれるのです。例えば40代の人がその日のうちに離職と再雇用があった場合(40代で定年はありませんが、有期雇用契約等を更新する場合はあり得る話です)に同日得喪を認めないのと一体どこが違うのか、と問われると合理的理由がすぐには見当たらず、答えに詰まってしまいます。
  今回の事務取扱いの変更理由について厚生労働省は全く触れていませんが、私が個人的に考えるに、「会社の便宜」をはかったものではないでしょうか。
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