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第161回
「年金的には万全な共働き世帯の落とし穴」
社会保険労務士 桶谷 浩
● フルタイム共働き世帯は、基本的には年金のみでやっていける
  夫婦ともにフルタイムで働いている(厚生年金に加入しない、いわゆる短時間勤務のパートタイマー的働き方ではない)共働き世帯は、基本的に「年金的には一番恵まれている層」です。
  当然ですが、女性も男性の総合職のような働き方をして、会社である程度の責任と地位のある立場まで出世しているような場合、老後の年金額は給与水準と勤続年数に応じて決まりますから、老後の年金は男性の管理職が受け取ることのできる年金額と同じです。つまり夫婦の各々が同水準の年金を受け取ることになり、その額は合わせれば30万円を超えるでしょう。また、妻が管理職ではない一般職であったとしても、勤続年数が40年ぐらいと長期間であれば、夫婦合わせて20万円台後半の年金額には十分到達します。
  共働き夫婦は、基本的に「老後生活を公的年金のみでやっていける」ということがいえるのです。
  そういうわけで、年金相談でも、あまり老後の不安を訴える方は少ないように思えますし、実際相談に来られる方自体も多くありません。
● 配偶者死亡の場合は
  さて、そんな恵まれた共働き夫婦ですが、配偶者のどちらかが死亡した場合はどうなるでしょうか。
  年金の知識があまりない方は「配偶者が死亡した場合はすぐに遺族年金」を思い浮かべると思いますが、この場合、遺族年金は全く当てになりません。
  例をあげましょう。
1. 夫の老齢厚生年金12万円、老齢基礎年金6万円、妻の老齢厚生年金12万円、老齢基礎年金6万円。
2. 夫の老齢厚生年金12万円、老齢基礎年金6万円、妻の老齢厚生年金9万円、老齢基礎年金6万円。
  1の場合は、夫婦が全く同じ年金額の例です。夫が死亡した妻には全く遺族年金は支給されません。
  2の場合は、夫婦共働きながら若干妻の稼ぎが少なかったあるいは加入期間が短かった時の例です。「夫の老齢厚生年金の2分1、妻の老齢厚生年金の2分の1」の合計が遺族厚生年金の基本ベースですから「6万円+4.5万円=10.5万円」、これが遺族厚生年金の基準額となります。そこから、優先して支給される妻自身の老齢厚生年金を引いた額が遺族厚生年金となりますから、「10.5万円−9万円=1.5万円」となり、支給される遺族厚生年金は1.5万円です。つまり、妻自身の老齢厚生年金9万円と、老齢基礎年金6万円との合計では16.5万円になります。
  1の場合は夫婦としてもらっていた年金が36万円だったものが18万円になり、ちょうど半額です。2の場合は夫婦としてもらっていた年金が33万円だったものが、16.5万円ですから、やはり半額です。
(注) いずれも夫婦が65歳以降で夫が死亡した場合で、経過的寡婦加算などは割愛しています。
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