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第163回
繰下げ支給の改善(年金の遡及の話1)
社会保険労務士 桶谷 浩
● 繰下げ支給をされた方に対する心配
  65歳から貰える年金を、最高70歳まで繰り下げる。
  実際の事例はあまり多くはありませんが、5年待てば年金額が42%増しという、早く亡くなるリスクを受容すればものすごく有利なしくみのため、自営業等の老後の年金額に不安のある方には関心が高い制度のようです。
  そして、現実に繰下げを選択する方もいらっしゃいます。
  しかし、年金の繰下げを選択された方に対してとても気になることがあります。
  それは、「間違いなく70歳の誕生月のとき、年金事務所に出向いて手続きをしてくださるかどうか」ということです。繰下げの選択時には口を酸っぱくして忘れず申し出をしてくださいと念を押しますが、そのことをちゃんと守ってくれているかどうかが心配なのです。このことは、年金の繰下げについての最大の心配事でした。
● そのまま放っておくと
  なぜそんなに心配するのか、理由はこうです。
  65歳から6万円の年金をもらう予定だった、Aさん。これでは額が少ないし夫も自営業としてまだ働いている状態だったので、自分の年金は繰り下げることにした。
  ここで、Aさんが70歳の時に年金の請求をすれば、65歳から5年経過しているため、42%増になりますから 月額6万円 × 1.42 = 8.52 万円 の年金額になります。
  月額にして2.52万円も増額するのですから、めでたしめでたしとなるはずですが、70歳時の受け取り申し出の手続きが遅れると遅れた分不利になるのです。
  たとえばいろいろあって結局請求が半年後になってしまったという例ですと、スタートが70歳と半年経過のところですから、半年分の年金は残念ながら貰えません。金額にして約50万円(=8.52万円×6ヵ月)の損になります。せっかく繰下げして年金月額を増やしたのにもったいないことです。
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