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第168回
支給開始年齢2歳繰下げ年金額2割減額??
社会保険労務士 桶谷 浩
● そんなに下がりますか?
  先日、某ネットで、年金に関する記事が掲載されているのを目にしました。
  現行の年金制度に批判的な内容をよく取り上げる週刊誌系のものなのですが、読んでみると、10月からの年金額の調整(3年で2.5%の減額)に便乗して、支給開始年齢と年金額の減額という「今の年金不信(不安)に対して更に輪をかけて煽るような」内容でした。
  確かに支給開始年齢の繰下げは最近よく話題になりますし、議論もされています。しかし年金額については、何を根拠に2〜3割減るといわれているのかよくわかりません。あまり根拠なく「日本の人口は減っているからそうなるだろう」程度の認識で年金を語られても困ります。
  とはいえ、このようなちょっと刺激的な記事は「若年層」にはかなり影響があります。
  まだ老後の心配もなく遊びたい盛りだったり、子供が小さいから費用がたくさんかかったり、というような様々な、なるべく年金保険料を払いたくない理由を探し出したい層にとって非常に魅力的に見える内容だからです。
  今回の話は、「それでは本当に支給開始年齢が下がったら、また、受け取る年金額が下がったら」というシミュレーションをして、若い年代にきちんと年金を考えていただきたいという内容です。
● やはり国民年金は代替するものがないほど有利
  国民年金の保険料は、現在は15,040円ですが、将来的には16,900円まで引き上げられます。ここまでは決定済みです。
  国民年金額は、今年10月からの水準で778,500円/年(40年保険料納付)、更にあと特例水準の調整で1.5%下がるとしても単純計算で766,800円/年くらいになります。
  1カ月分の保険料16,900円を支払うことで、年金が1597.5円/月(=766,800円÷480月(40年))増えるわけですから比で言うと、「16,900:1597.5=10.6:1」です。
  これは支払った保険料に対して、ほぼ10年と半年で元がとれることを意味していますので、65歳から年金を受け取り始めたとすれば、75歳半くらいで元がとれることがわかります。
  平均死亡年齢を、男性で83歳、女性で89歳(平成22年生命表の寿命中位数)とすれば、65歳からの生存期間は、男性で18年、女性では24年ですから、10年半で元をとるというのは、圧倒的に有利なことだと気づいていただけると思います。
  さて、国民年金の保険料は「もうこれ以上は引き上げない」というのが決定事項ですから、他に年金財政を改善するための方策としては、支給開始年齢を繰り下げるか年金額を下げるかしかありません。
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