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第170回
共働き夫婦の加給年金はどうなのか?
社会保険労務士 桶谷 浩
● モデルケースは主婦である妻が加給年金を受け取る場合
  これまでの連載でたびたび触れていますが、年金の仕組みを説明する時よく利用するモデルケースは、夫が会社員、妻が2〜3歳年下の専業主婦です。このケースに該当しない人も沢山いらっしゃいますが、割合的にはこのケースに該当する方が一番多いですし、遺族年金を説明するのにも都合がよいのでどうしてもこのケースが年金の説明をする際のファーストチョイスになります。そうすると加給年金もこのモデルケースで説明することになります。
  この専業主婦のケースには全期間が国民年金期間であった妻だけでなく、「妻の厚生年金の期間はあるが20年なかった」という場合も含みます。15年ほど会社に勤務したけれど、その後は寿退職して専業主婦というような場合も、このパターンの応用で全てを説明してしまいます。全期間が国民年金の期間であった妻と違い、厚生年金は支給されますので支給開始年齢等の説明が若干異なってきますが、加給年金や振替加算の説明は全く同じだからです。
  では、妻が20年以上厚生年金(あるいは共済年金)の加入期間があった場合はどうでしょうか?
  俗に「共働き夫婦の年金パターン」と言われている例です。数が多くないせいかモデルケースとしてはあまり出てきません。
● 夫婦の年齢差により取り扱いに差が出てくる
  ここで現在「夫60歳(昭和28年4月生まれ)、妻58歳(昭和30年4月生まれ)」のどちらも20年以上厚生年金に加入している共働きのご夫婦に登場してもらいましょう。
  まず確認ですが、夫が20年以上会社員の期間がある場合、現在のしくみでは、「夫が65歳の時点から妻が65歳になるまでの期間」加給年金が支給されます。したがって妻が専業主婦パターンの場合、夫が65歳から妻が65歳(夫が67歳)までの2年間、加給年金(年間約39万円)を受け取り、それが終わった後はわずかな額ですが振替加算が妻に終身付加されるという形になります。
  ところが、共働きパターン(妻が20年以上の厚生年金加入期間がある場合)では、こういうわけにはいかず、妻が年金(特別支給の老齢厚生年金)を貰い始めると、加給年金は受け取ることができなくなります。ここが大きな違いです。妻の厚生年金加入期間が20年未満であれば、60歳から(昭和28年4月生まれの場合)特別支給の老齢厚生年金を受給したとしても、それは加給年金に影響を及ぼしません。
  しかし、前述のとおり夫婦とも20年以上厚生年金の加入期間があって厚生年金をもらう共働きケースの場合は加給年金に影響を及ぼします。夫が65歳に達したとき、妻が(特別支給の)厚生年金を受給し始めていると、初めから加給年金は支給されませんし、もちろんその後の振替加算も支給されることはありません。共働きといっても妻の給与が非常に低額で、かつ厚生年金加入期間がギリギリ20年の場合だと、妻自身の特別支給の老齢厚生年金よりも加給年金のほうが多い場合も普通にありますが、その場合でも加給年金はもらえません。
【夫60歳・妻58歳の共働きの例】…………5年後、夫65歳
夫:65歳 → (加給年金なし)  ―――――――→ 67歳
妻:63歳 → (特別支給の老齢厚生年金受給) → 65歳
  (妻は60歳から特別支給の老齢厚生年金の支給を受けている)
  ※原則として加給年金の支給はないが、妻の年金が全額停止される等のときは例外的に受け取れる場合もあり。
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