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第171回
在留外国人の方の年金相談は難しい
社会保険労務士 桶谷 浩
● 3つも名前がある!?
  先日あった年金相談の事例です。
  外国籍の60歳の女性で、幼少期から現在までずっと日本で生活をされている方が相談に来られました。伺ったお話の内容によると、年金受給に必要な25年の期間を満たしていらっしゃらないようでしたので、相談の途中でご本人の承諾を得たうえで「ねんきんダイヤル」に電話して年金の加入記録を確認してみました。
  ところが、担当のオペレーターの回答は、「そのお名前での年金記録はありません」。
  しかしその方が持参された年金手帳には、「〇〇年金事務所」と「基礎年金番号」の押印がありましたので、記録が全くないわけはないはずです。おかしいと思い、さらにオペレーターに過去にさかのぼって記録を確認してもらうようにお願いし、同時に相談者本人から詳細な聞き取りを行ったところ、これまでに2回名前を変更されていることが判明しました。
  その結果、生年月日や勤めていた会社の名前等から、加入期間の確認は取れたのですが、在留外国人――特に太平洋戦争直後よりずっと日本にお住いの外国人の方の独特の慣習として、日本で名乗っている名前を容易に変更できるため、この方のように、厚生年金の被保険者となっている方が名前を変更してしまうと、以前から懸案となっている「宙に浮いた年金」問題がさらにこじれた状態となって降りかかってきているようでした。これでは年金記録を完全なものにしようにも難渋するわけです。
  この場合、年金記録の問題でいろいろと指摘された、漢字の読み方の違いとか、濁点の有無とかいう話ではなく、まったく関連のない名前であるためにさらに難易度は増します。
  そして、通常の場合と異なり、「当時お勤めだった時のお名前はどういう名前でしたでしょうか?」という問いかけが必要となるのです。
  なおかつ、今年(2013年)の7月からは、外国人についても「住民基本台帳ネットワークシステム」(住基ネット)にようやく接続になったという報道がなされていましたが、今まで住基ネットに接続していなかったということは、ここ数年大騒ぎをし、ほぼ全ての現役加入者と年金受給者が受け取ることができた「ねんきん特別便」や「ねんきん定期便」による年金記録の確認ツールが送付されていないと想像できるわけで、いわば救済措置が最後となってしまった人たちといえます。
  このような諸事情ですから相談に関しては極めて慎重な対応が求められます。
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