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第172回
もったいなさすぎる高額所得者の国民年金未納
社会保険労務士 桶谷 浩
● 徴収体制の強化?
  国民年金保険料の納付率を上げるための徴収強化策を話し合ってきた厚生労働省の社会保障審議会年金部会では、平成25年12月13日に「年金保険料の徴収体制強化等に関する専門委員会報告書」をまとめました。
  その主な内容は、現在は財産差し押さえにつながる督促は滞納者のごく一部にしか送られていませんが、今後は滞納者の所得などによって一定の基準を設けて、その範囲の者には必ず督促を実施する取り組みから始め、順次対象を拡大し、最終的には滞納者全員に督促を徹底するとのことです。その一方で、低所得で保険料の負担能力のない者に対しては、日本年金機構から働きかけて、簡便な方法で免除申請ができるようにするとのことです。
  報告書を見る限り、なかなか向上しない納付率に業を煮やした厚労省は今後さらに厳しい徴収体制を敷くことが予想されます。
参照  : 厚生労働省HP「社会保障審議会年金部会年金保険料の徴収体制強化等に関する専門委員会報告書のとりまとめについて」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000032044.html
● 保険料にかかる税金メリット
  今回の話は次回の税金の話と重なる部分があります。できれば次回も併せて読んでみてください。
  つい先日、とある雑誌に「個人年金のメリット」という内容の記事が掲載されていました。その内容は、最近の運用成績は不振なので以前のように払った分を大きく上回るような受取額にはならないが、個人年金には所得控除という税金面でのメリットがあるので加入する意義は十分にある、というものでした。
  しかし、その税金面でのメリットという点では、明らかに「年間4万円という上限がある個人年金」より「支払った全額を社会保険料控除にできる公的年金」のほうが勝っています。
  国民年金の保険料はおおよそ年間18万円。これがまるまる社会保険料控除となって課税対象とならないのですから、累進税率が適用される高額所得者の場合、所得が増えれば増えるほど実質の負担は減る、つまり国民年金に有利に加入できることになります。
  さらには保険料の半額に相当する額が国庫負担ということで、保険料を納付する、しないにかかわらず国民の税金で負担されているわけです。誤解を恐れずわかりやすく言えば、国庫負担は表に出てこないのでなかなか簡単には思い浮かびませんが100円の商品を買うのに50円払えば残りの50円は国が負担してくれるということです。当然ですが未納滞納をすればその50円は負担してくれません。そもそも国が負担してくれる50円は自分たちが払ったものです。このような面だけ考えてみても、「払えるのに保険料を払わない」という選択肢をとることは理解に苦しみます。
  手始めに強制徴収の効力を持つ督促状を送付する対象は滞納者全員ではなく、年収が一定額以上ある者ということで、なおさらそういう感があります。
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