Home > 税と社会保障 > 知ってビックリ!年金のはなし

第173回
確定申告の季節、年金にかかる税金の話
社会保険労務士 桶谷 浩
● どちらに聞けばいいのですか?
  数年前ですが、確定申告の期限が迫った3月某日、税務署に確定申告に行ったところ、大混雑した中である女性が年金にかかる税金について税務署の職員に問い合わせをしていました。
  待ち時間の間、そのやりとりが耳に入ってきたのですが、その職員は最初はテキパキと対応していたのに途中から話の内容が「税金」から「年金」に飛んでしまったため立ち往生しておりました。
  一般の方にとっては、年金事務所だろうが税務署だろうが関係のない話で、相手が何の専門家か気にせずに自分の年金およびその年金にかかる税金の話をまとめて相談したくなる気持ちはわかりますが、一方の受け答えをする専門家にとっては、自分の専門領域外のことになると極端に知識が薄くなくなりますから、話がどんどん広がってしまうと返答に困ってしまいます。この辺りの微妙な領域は税理士でも社労士でもなく、両方の項目を浅く広くカバーしているFPの得意分野なのかもしれません。
● 受け取る年金にかかる税金のおさらい
  まず基礎の基礎、受け取る年金の税金の確認です。ここがわからないと話になりませんから、確実に復習しておきましょう。基本は以下の3つです。
 1 老後の年金 = 課税
 2 障害の年金 = 非課税
 3 遺族の年金 = 非課税
  ただ、1の老後の年金はよく説明等で出てくる通り、公的年金控除があり、課税されるといっても普通の所得よりも断然有利になっています。
  老後の年金については、国民年金のみを受け取る方は支給開始年齢が65歳でかつ付加年金や振替加算が付いたとしても、120万円を超えることは考えられませんので、ご相談を受けた時は「税金はかかりません」と即答しても問題ありません。
  しかし厚生年金期間がある方でも、次の例のように簡単に計算してもらえばわかりますが、たとえば標準報酬額が40万円(年収480万円)で会社に10年勤務した場合、
40万円(標準報酬額)×5.481/1000×120カ月=26.3万円
  となり、年間26万円ほどの年金です。これに国民年金の満額78万円を足したとしても、120万円には届きません。
  例えば学校を卒業してすぐ会社に入り、結婚まで7〜8年勤めていたという主婦の場合は、入社から間もないころは給与自体が安いですし、ほとんどのケースについて税金がかかる可能性はないと考えられます。
  短期間であっても給与の高い会社の役員をしていたなどというような特殊な事情が推察されない限り、大雑把に10年を超えない期間の厚生年金については、年金に税金はかからないか、かかったとしてもごくわずかですからご安心ください、というように普通はご説明しています。
  一方、社会福祉的視点から2の障害年金、3の遺族年金は税金がかかりません。ただし、障害年金と子供が幼い時に親が死亡した場合に受け取る遺族年金については保護する必要が強くありますが、高齢夫婦の夫が死亡した場合に妻が受け取る遺族厚生年金まで非課税にして保護する必要があるのかどうかという点については疑問の声も結構あります。将来この点については改正されるかもしれません。
参照  : 国税庁ホームページ「公的年金等の課税関係」
http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1600.htm
※ これ以降は会員専用ページです