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第177回
年金以外のことも確認しないと、答えを間違える?
社会保険労務士 桶谷 浩
● 相変わらず多い「103万円」「130万円」の相談
  サラリーマンの妻からよく質問されるのが、「パートの収入はどのくらいまでなら大丈夫でしょうか?」というもの。一般的な答えでしたらそう難しいものではありません。ご存じのとおり、「103万円」と「130万円」の壁の話です。
  103万円は、所得税がかかる、かからないの分岐点です。パートの妻の給与収入がちょっとでもその壁を超えてしまうと、そのはみ出た分に対して税金がかかります。非課税の時のように賃金をまるまる受け取れるわけではありませんが、当然一番税率が低い課税ですので、支払う税金(所得税)は僅かです。
  また、夫は妻のパートにより配偶者控除が使えなくなっても、その所得が少なければ配偶者特別控除(夫の収入が極端に高くない場合)を受けることができますから、配偶者控除が使えなくてもそれほど極端に税率が上がるということは考えられません。
  ということで、103万円の壁に関して世間ではあれこれ言われていますが、そこは無視して働くほうが有利になるというのが一般的には正解となります。
  ところが、130万円の壁は超える、超えないで大きな違いがあります。130万円を超えると、配偶者が扶養から外れますので、パート社員であっても自分自身で国民年金および市区町村の国民健康保険の保険料を支払わなければならなくなります。
  ここの差がかなり大きいのです。年収が130万円以内であれば妻の健康保険と国民年金の負担はゼロ。ところがちょっとでも超えると、超えた額の多寡にかかわらずドンッ!と20万円以上(国民年金保険料+国民健康保険料)の出費が必要になるわけで、「何のために働いているのかわからない状態」になってしまいます。
  ちなみに、国民健康保険の保険料は、前年の所得金額に応じた「所得割額」のほかに、国民健康保険加入者数による「均等割額」と同加入者世帯数による「平等割額」の合計から算定されているため、所得額が低くてもそれなりの額になっています(市区町村により計算は異なります。ここでは東京23区の資料をもとに計算)。
  したがって、セミナー等で前述の質問に答える際は、「103万円の壁は突破しても大して影響ありませんが、130万円の壁を突破してしまうと、その後は相当の額の給与(ここのところはさじ加減ですが、年収150〜160万円を超えるくらい)で働ける環境でない限り働くメリットがなくなってしまいますよ」という話で締めくくってしまいます。
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