Home > 税と社会保障 > 知ってビックリ!年金のはなし

第180回
年金と医療・介護、どっちが大変なのでしょう?
社会保険労務士 桶谷 浩
● なぜ年金だけがつぶれると思われるのか?
  先月、社会保障・税一体改革の説明会に出席して話を聞いてきました。説明会の資料の1つ、「社会保障に係る費用の将来推計の改定について」(厚生労働省)の中に興味深いもデータがありました。
  これによると、年金、医療保険、介護保険、子ども・子育て、その他の福祉の給付費の合計は、2012年度は109.5兆円、それから13年後の2025年度には148.9兆円になるという将来推計を提示しています。それを主要な項目別の増加率で見てみると、GDPは約1.27倍、年金は約1.12倍、医療保険約1.54倍、介護保険2.36倍になっていました。そして図表に添えられている解説には、「2025年にかけて医療・介護の給付費が急激に増加」と書いてありました。
  社会保障の専門家は、将来の社会保障費について、「年金」の負担増も懸念していますが、それよりも「医療保険」「介護保険」の負担増をより深刻に受け止めています。もちろん予想通りにいくかどうかはわかりませんが、2025年までに増えている費用は、年金より医療保険や介護保険のほうが圧倒的に多いのです(ちなみに、2012年度における予算ベースでの各給付費は、年金53.8兆円、医療保険35.1兆円、介護保険8.4兆円となっています)。
  私も「年金も確かに危ないが、もっと危ないのは医療・介護だ」という話は前々から聞いていたので、「やはりそうか」と改めて思いました。
  ところが、我々が普段街の中で聞く人々の会話では、「年金はつぶれる」「年金は危ない」ということばかりです。医療保険や介護保険がつぶれそうで心配だということはあまり聞いたことがありません。それどころか、関心がないのか話題にすらなりません。年金は明日にでもつぶれるようなことを大声で言う人、いや人によってはもう崩壊しているというようなことを平気で言う人が、健康保険や介護保険についてはノーコメントなのです。ここのところが、「現状認識不足」だなあと思うわけです。
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