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第181回
経過的寡婦加算のない時代が間近に
社会保険労務士 桶谷 浩
● 遺族厚生年金も変化していきます
  サラリーマンの夫が死亡した場合、その妻は遺族厚生年金を受け取りますが、妻が65歳になり自分の老齢基礎年金を受け取るようになると、期間限定で「経過的寡婦加算」という割増給付があることをご存知の人も多いと思います。
  妻が受け取る遺族厚生年金額は、夫の死亡時点までの期間における夫の平均標準報酬額を算出し、それに乗率を掛けて計算します。そうなると、夫の加入期間が短い場合は年金額が非常に少なくなりますから、それを防ぐために加入期間が25年に満たない場合は25年加入とみなす仕組みを取り入れています。つまり加入期間が1年で亡くなっても、10年で亡くなっても、25年加入していたものとして計算されます。これで加入期間の多寡にかかわらず、ある程度の額の年金を受け取れることがわかります。
  しかし、これだけでは残された妻が食べていくにはまだ足りません。たとえば30代前半で夫が死亡したとすると、平均標準報酬額は入社から死亡時までの夫の全給与を基に計算するので、一般的に新入社員の場合は入社から年数の浅い期間は給与が安い時代になりますから、平均標準報酬額もその影響でかなり低廉になるはずです。
  仮に平均標準報酬額が30万円(おおよそで給与23万円、賞与年3.6カ月、年収360万円という想定)で遺族厚生年金を計算してみましょう。家族の状況により遺族厚生年金の支給額は変わってきますのでここでは、サラリーマンの夫は32歳、妻は30歳、子供は2歳の子が1人で、夫が死亡したという設定で話を進めます(再評価率等は無視し、計算式も概略式ですのであくまでも目安とご理解ください)。
  遺族厚生年金の本来の額は、
 30万円×5.481/1000×300カ月×3/4=370,000円(年額)
  ですので、月額にすると約3.1万円ほどです。
  こちらはインフレ等によるスライド以外終身変わりません。しかし額は少ないです。
  ただし、18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子がいる場合には、この金額プラス基礎年金および子の加算がつきますので、年金額はたとえば子供が1人いた場合は99万5,200円(年金額77万2,800円+子の加算22万2,400円)、月額にすると約8.3万円ですので、先ほどの遺族厚生年金と合わせると月額で約11.4万円になります。
  しかし子が18歳の年度末になるとその遺族基礎年金の支給は終了となります。このままでは年金額が激減してしまって残された妻の生活が成り立ちません。そこで妻自身の老齢基礎年金の支給が開始される65歳までの間、国民年金の4分の3(30年分相当)の年金を加算して補います、これが中高齢寡婦加算(平成26年度額で57万9,700円、月額にすると約4.8万円)です。
  その中高齢寡婦加算は65歳で終了し、妻自身の老齢基礎年金がその役割を受け継ぎますが、中高齢寡婦加算が完全に終わるのではなく、代わって一定額が加算されます。それが経過的寡婦加算です。ただし、その額は年齢によって大きく異なる点がクセモノです。
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