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第187回
年金請求漏れの卵
社会保険労務士 桶谷 浩
● 日本国籍の海外在住者
  海外(特に中南米)から日系人の方がよく出稼ぎに来られています。日系といってもほとんどの方は「すでに在住している国の国籍を取得した人」であって、外国人であることには間違いありません。
  外国人であっても、日本国内の会社で働いているなら厚生年金に加入する義務があります。しかし、3年〜5年という短期間だけ厚生年金に加入して、その後、母国に帰国した場合は当然ながら年金受給資格期間に達していませんので、年金は一時金として精算処理されることになります。これを「脱退一時金」と呼びます。最近は年金通算をする社会保障協定締結国が増えており、その場合は一時金精算をしないケースもなかにはありますが、精算処理が原則です。
  話を日系人に戻しますが、日系人のなかには祖父の代に日本から南米に移住し、現地に居を構えてずっと生活してきたが、その子も、孫もその国に帰化せず、未だ日本国籍のままでいる――という方が世の中にはいらっしゃるのです。厳密には日本人ですから日系人ではありませんね。
  このような方の年金は一体どうなっているのでしょうか。もちろん海外で生まれてそこで一生を送られた、つまり一切日本と縁がなく、一度も日本で働いたことがない場合は、国籍が日本であっても日本の年金はまったく関係がありません。問題はこのような方が日本に出稼ぎに来られた場合です。
  生まれも育ちも南米であったとしても、国籍はまごうことなく日本です。
  そうなると、本人は日本へ来たのが出稼ぎ感覚であっても、形のうえでは、海外で生まれて育った日本人が、日本に“帰国”して働くということになります。
  国内の会社に3〜5年勤めたとしたら、当然ですが、その間は厚生年金に加入することになります。彼らはれっきとした日本人ですから、社会保障協定による短期滞在の場合の例外免除措置等は一切ありません。また、南米の母国に戻る際も、年金を一時金として精算することもできません。
  では、打つ手はないのでしょうか。
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