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第188回
繰上げと繰下げの敷居の高さの違い
社会保険労務士 桶谷 浩
● 繰上げの時は非常に気を遣う
  公的年金(老齢厚生年金、老齢基礎年金)の繰上げ、繰下げは似たような仕組みです。
  原則、65歳から受取開始となる年金を最長60歳まで前倒しして受け取る(年金額は減額)仕組みを「繰上げ」、最長70歳まで待機してから受け取る(年金額は増額)仕組みを「繰下げ」と言います。
  ご存じのことと思いますが、繰上げ支給を選択する場合は慎重な判断が求められます。繰上げは一度選択してしまったら取り消しができませんから、相談に来られたお客様に説明したりなど事務を代行する際は細心の注意を払います。1カ月あたりの年金額が減額されるうえに65歳以降も一度減額された金額は元に戻らず一生続きます。また、障害年金は受給できなくなったり、遺族年金を受給する際のマイナスがあったりしますから、説明不足ですとのちのちトラブルになる可能性も高いです。
  繰上げを検討しているお客様には、必ずその旨を説明し十分に納得してもらってから事務を進める必要がありますが、クレームを避けるためついつい説明もくどくなります、そうするとお客様もいい顔をしない、そんな悪循環に陥ります。
● 繰下げも気を遣いますが、繰上げに比べれば…
  一方、年金の繰下げ支給も、一旦繰下げを選択してしまうと増額したその額で年金が確定してしまうのは繰上げと変わりません。厳密には物価の変動で将来額は若干変化しますが、ベースとなる年金額はこの繰下げ時点のものです。ですからいい加減な説明はできませんからそれなりに気を遣います。
  ところが、繰下げと繰上げでは大きく異なる点があります。
  たびたび誤解があるのですが、繰下げについては、65歳になった時点で「繰下げをする」という明確な意思表示を年金事務所等にする必要はありません。
  どういうことでしょう?
  国民年金のみに加入されていた方が65歳になったケースを例に考えてみましょう。その方が65歳になる3カ月前に、日本年金機構から年金請求書などが送られてきます。繰下げを希望される場合、その書類をどうすればいいでしょうか?
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