Home > 税と社会保障 > 知ってビックリ!年金のはなし

第190回
もっといるかもしれない、もらえるのにもらっていない人
社会保険労務士 桶谷 浩
● 年金の受給要件「25年」にはカラ期間が含まれる
  老後の年金は、25年の納付・免除・カラ期間があれば受給資格があることは常識ですが、受給権があるのに年金額がゼロという方がいらっしゃいます。
  こういう方を俗に「全カラの人」といい、以前はたまにお見受けしましたが最近は(若い人は第3号被保険者期間が長い方が多いので)ほとんどお会いすることはありませんでした。しかし、久しぶりに先日ご相談にいらした方がいて、まだまだいらっしゃるのだなと感じたのと、年金の受給要件の緩和(25年→10年)が迫っていますので、またこのような問題が再燃するかもしれませんので今回改めて取り上げてみます。
  ご相談者は、昭和17年生まれの72歳の女性です。年金は一切受け取っていらっしゃいませんでした。年金履歴を聞き取ったところ、以下のようなものでした。
   中学卒業後に会社に就職し、5年ほど勤めた。この期間の年金は一時金で精算した。
   勤めていた会社は結婚を機に退社した。結婚した時、夫はサラリーマンだった。
   夫は結婚後20年ほど会社勤めをし(全期間が昭和61年3月以前)、その後退職して自営業になった。
  年金の仕事をしている人であれば、上記@とBの内容から相談者は年金の受給に必要な25年の加入期間を満たしており、老後の年金を受けられる人だということがわかります。
  しかし、年金額を計算するにあたって@もBも対象にならないので、その結果年金はゼロであるということもわかります。
  理由は、@は脱退手当金受給ということで年金を精算しており、この間はカラ期間に該当していること。一方、Bはサラリーマンの妻がなる第3号被保険者は昭和61年4月以降の結婚期間が対象であり、それより前のサラリーマンの妻はカラ期間でありこれに該当しているからです。つまり年金計算の対象期間が全部カラ期間なのです。ということで、年金がゼロならこの方が年金を受給できる方法を考えるのは無意味ではないかと一瞬思ってしまいます。
  しかしそれでは年金相談に携わる者としては洞察が浅いのです。
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