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第194回
年金支給開始年齢を選択させることで生まれるリスク
社会保険労務士 桶谷 浩
● 繰上げ、繰下げは例外扱い!?
  国民年金は65歳、厚生年金は年齢により支給開始年齢が異なります(男性の場合、昭和28年4月1日生まれまでの方は60歳、以後順次繰り上がって、昭和36年4月2生まれ以降の方は65歳)。これが基本であって後は例外的に、繰上げ支給、繰下げ支給の選択ができ、60〜70歳の間で支給開始を選べるようになっています。
  我々FPは当然ですが、一般論として年金のご説明をする訳ですから、特に何か条件でもつけられない限り原則の支給開始年齢で年金のご説明をします。
  ところが最近の現場で、若干気にかかる状況をよく目にするようになりました。
● 年金請求のやり方が例外の垣根を下げている
  年金の請求(裁定請求)は郵送でもできるということはご存じかと思います。
  その場合に、手続きをよく知っている人の中には、65歳前に年金請求をされる方に対して、特別支給の老齢厚生年金の年金請求書の一番初めのページに、赤字で「本来請求」と書いて出すように指導している人もいらっしゃいます。
  65歳前の特別支給の老齢厚生年金の請求手続きで本人が直接、年金事務所に行った場合は、面前に担当者がいるので、「繰上げます」または「繰上げません」という意思表示が明確にされますので、本来請求(繰上げの意思のない請求)という意味でハンコを押したりする所があるのですが、その処理をあらかじめ織り込んだものです。
  また、国民年金のみの方で65歳以降に手続きをされる場合、請求書とは別に「繰下げ意思の確認書」――年金を65歳から通常どおりにもらうのか、それともしばらく待ってからもらうのかの意思確認――の提出を求められることがあります。
  ただしこれはローカルルールで、全国統一ではないので全くしていないところもあるかもしれません(これはこれで全国一律の行政サービスなのに地域によって扱いが異なるという別の問題を含んでいるのですが)。
  本来ならば繰上げや繰下げの請求は、「受給権者が自分の意思で行うもの」であって、受給者自らよく考えて申し出るというのが筋です。
  ところが、昨今のような対応をみると、いかにも「どの時点で年金を受け取りますか? 繰上げか繰下げを選択しますか?」ということを年金機構のほうから積極的に問いかけているように思えます。明示がなければ本来年齢での請求のはずなのに、その場合でも「本来の請求をします」と明示してほしいということなのでしょう。
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