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第195回
会社員時代に発症したのに障害基礎年金しかもらえない!?
社会保険労務士 桶谷 浩
● 障害年金の原則
  障害年金は「初診日主義」を採っています。
  初診日に厚生年金に加入していれば障害厚生年金と障害基礎年金が支給され、国民年金に加入していれば障害基礎年金のみの支給となります(公務員等が加入する共済年金の場合は障害共済年金と障害基礎年金が支給されますが、本稿では厚生年金のケースに絞って話を進めます)。
  病気を発症した時やけがを負った時ではなく、「初診日=初めて病院に行った日」が支給要件の基準日になりますので、実際には「発病したのは会社に勤めている時だったのに、病院に行ったのは会社を辞めてから」というような場合には、残念ながら障害基礎年金しか受け取ることができません。
  例えば、体の変調を感じ、それがどんどん悪化して仕事を続けるのが困難になり、退職せざるを得ないと思ったら、じっと我慢して退職後に病院に行くのではなく、取る物も取りあえず病院に行って診察を受けて初診日を確定してから会社を辞めるのが鉄則であって、辞めてから病院に行くのは年金受給の観点からは最悪の選択と言われているのです。
  障害年金を受給できたとしても、我慢して後回しにしたら≪国民年金≫、すぐに病院に行ったら≪厚生年金+国民年金≫というように初診日のタイミング次第で年金額が格段に違ってくる訳ですから、我慢すると身体的のみならず経済的にも“痛い”ことになるのです。
● しかしそうは言っても…
  原則はそうであっても、実際にはそれが難しいことがあります。
  最近、「若年性認知症者の障害厚生年金の取り扱いの変更を求める運動」をされている方とお会いしました。その運動の主旨は次のようなものです。
  会社勤務の人は一般的には65歳より若いですから、通常なら認知症になるような人はいません。仮に認知症が発症したとしても罹患していることを本人も周囲も全く気づきません。そのため、症状がもとで仕事上のミスを犯すことがあっても、本人も周囲も会社での人間関係による精神的ストレスや過労といった精神的・肉体的疾患またはダメージなどに原因を求めてしまうのが普通です。よもや認知症とはだれも疑いません。
  そして本人あるいは周囲はその状況が悪化してくると、「仕事のストレスからくるものであれば、一旦離職して静養すれば症状がよくなるのでは」と考えて、会社を辞める決断をするのです。しかし原因はストレスではなく認知症ですから、会社を辞めても症状が改善するわけもなく、ますます悪化していきます。おかしいと思って精密検査を受けてようやく「若年性認知症」ということが判明するのだそうです。
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