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第196回
遺族年金に垣間見る
「厚生年金と共済年金の一元化」の必要性
社会保険労務士 桶谷 浩
● 長期要件、それとも短期要件を選ぶかで支給額に差が出ることも
  遺族厚生年金および遺族共済年金を受給するには、以下の4つの要件のうちのいずれか1つを満たしていることが必要です。
(1) 在職中に死亡した場合
(2) 在職中に初診日のある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡した場合
(3) 障害等級1級または2級に該当する障害厚生(共済)年金の受給者が死亡した場合
(4) 老齢厚生(退職共済)年金を受けている人や受給資格期間を満たしている人が死亡した場合
  ご存じのとおり、遺族厚生(共済)年金を受給できる遺族は、死亡した人に生計を維持されていた配偶者、子、孫、夫、父母、祖父母です。(子・孫は、18歳到達年度の年度末を経過していない者または20歳未満で障害年金の障害等級1・2級の者。夫・父母・祖父母は、死亡時において55歳以上であることが条件で、支給開始は60歳から。ただし、夫については遺族基礎年金を受給している時は遺族厚生年金も受給できる)。
  上記4つの要件のうち、厚生年金加入者もしくは障害厚生(共済)年金受給者が対象である(1)(2)(3)を「短期要件」、老齢厚生(退職共済)年金受給者もしくはその資格者が対象である(4)を「長期要件」と言います。受給要件はこの短期要件と長期要件に大別されますが、長期と短期とでは加入とみなされる期間が異なるため、年金額にも影響が出ます。また、加入状況によっては短期要件、長期要件の両方とも適用できるケースがあり、どちらを選ぶことも可能です。上記4つの要件のうち、(2)と(3)は少しわかりにくいので今回は省略して、一番よくあるケーとして(1)と(4)に当てはまる事例で考えてみましょう。
  【事例1】:仮に平均寿命まで生きられるご夫婦がいたとして、元会社員の夫は80歳を超えたくらいで亡くなったとします。夫はすでに会社を退職(あるいは70歳を超えて厚生年金の資格喪失)していますから、この場合は(4)の長期要件のみに該当します。
  【事例2】:一方、若い方――例えば大卒で勤続15年のサラリーマンの夫が死亡した場合は、年金受給に必要な加入期間300カ月(25年)を満たしていませんから、(1)の短期要件のみに該当します。基本的には“若い頃=短期”、“高齢になってから=長期”というイメージで良いでしょう。
  かつての制度では、短期要件と長期要件とでは年金額の計算式の乗率が異なる(長期要件の方が有利)ということがありましたが、現行制度における長期要件と短期要件の違いは、勤続25年未満の場合において「25年のみなし」があるかないかと、「中高齢寡婦加算の取り扱い」が異なる程度です(ただし、昭和21年4月1日以前生まれの方の死亡については計算式の乗率は異なります)。
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