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祝!第200回
これから重要になる老後設計とFPの関与
社会保険労務士 桶谷 浩
● 200回を迎えて
  今回の話で通算200回となりました。継続してお読みいただいている方ありがとうございます。
  さて、今回はFPと年金の話という大きなテーマです。
  先週、年金相談で1人の女性とお話ししました。加入していた終身の年金(詳細はあまり言えませんが一種の企業年金のようなもの)ですが、支払元より「終身年金を一時金で受け取ったらどうですか?」と強く勧める内容の案内が届いたとのこと。
  受給中の年金はおおよそ年額24万円(月2万円)弱の定額の終身年金でした。この案内を読むと、今の時点で一時金として受け取る場合は175万円になると試算されていました。
  つまり、
  一時金175万円÷年額24万円≒7.3年分
  ということですね。
  ご相談者の年齢は75歳、私のところに来る前に別の社労士に相談したところ、「一時金として受け取ったらよいのではないですか?」と言われたので、今日は手続きをお願いしに来られたということでした。
  ちょっと待ってください、この連載で何度も申し上げているように、女性の平均寿命は86歳、女性の寿命中位数は89歳です。寿命中位数とは、生命表上で、出生者のうちちょうど半数が生存すると期待される年数のこと。89歳までに亡くなる女性は半数ということになります。そこから相談者に当てはめて考えてみると、
  平均寿命まで生存した場合……24万円×11年=264万円(累計受取年金額)
  寿命中位数まで生存した場合…24万円×14年=336万円(累計受取年金額)
  一時金の175万円の受取と比較して、かなり不利です。
  更に言うと、75歳女性の平均余命は15年ですから、90歳まで生存するのが平均です。
  一方、75歳から7.3年経つと82歳です。82歳女性の場合、出生者10万人あたりの生存数は7万5,706人ですから(平成25年簡易生命表)差し引いた分が82歳までに亡くなった人数とするなら、
  82歳を迎える人数約7万5,000人:82歳までに死亡する人数約2万5,000人≒3:1
  というように、今から7.3年後に生きている確率は3対1です。
  一時金175万円は今確実に貰えるお金で、仮に手続きの翌日に死亡しても返せとはなりませんから、それはそれで魅力的なものなのでしょうが、今後の生活設計を考えると今貰っている年金の中から企業年金の2万円を減らして「一時金として受け取る」というアドバイスは、FPの立場としては安易にできるものではありません。
  しかも、支払元が一時金を勧めるのには理由があります。「年金は事務処理的に手間がかかる」が「一時金は手間がかからない」からです。もちろん問い合わせをしても絶対にイエスとは言わないでしょうが、一時金を選択してもらえれば1回の事務処理で済むので相当な事務の軽減になるのです。そのような意図が透けて見えているだけに、「冷静になってお考えください」と言いたくなるのです。
  一時金をお勧めになられた社労士がどのようなお考えでそのようなアドバイスをされたのか知るよしもありませんが、お客様にはもう少し慎重に考えてから結論を出していただくことにしてお帰りいただきました。
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