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第203回
ミクロで見る「マクロ経済スライド」
社会保険労務士 桶谷 浩
● マクロ経済スライドが初導入、その影響は?
  平成27年度の国民年金の年金額は78万100円(月額6万5,008円)で、26年度の77万2,800円(月額6万4,400円)に比べて7,300円(月額608円)の増額です。
  新聞報道等では、「27年度年金額からマクロ経済スライドを初導入」ということでしたが、これまではマクロ経済スライドを導入すると年金額が目減りするという話でした。しかし、年金額自体は昨年度より増額しているので、マクロ経済スライドによってどのくらい目減りしたのかわかりません。しかも新聞報道等では「年金額は1.4%の上昇」ということでしたが、実際の年金額は78万100円ですから上昇率と額が合いません。
  肝心なことは、年金額の改定は、昨年度の額に改定率とマクロ経済スライドを乗じて今年度の額を算出したのではないということです。ご存じかと思いますが、昨年度の年金額77万2,800円は、平成12年から3年間にわたる物価の下落を年金額に入れていない、いわゆる「物価特例」の下駄を履かせた水準での年金額でした。
  その特例が今年度から解消されたことにより、下駄を履かない金額に戻ったのです。実際の受取額を比較するだけなら、下駄を履かせた昨年度の額と、今年度の額をそのまま使えばいいのですが、マクロ経済スライドの影響を考察するなら、下駄を履かせていない状態の昨年度の額と今年度の額を比較しないといけません。
  実は、昨年度の国民年金額には76万9,200円(月額6万4,100円)という数字が別にありました。こちらは全く表に出なかったのでほとんどの方が目にしていませんが、これは「下駄を履かせていない」本来給付すべき年金として計算した額でした。理論的な比較をする時はこちらを使います。
  ここの所がよくわからず悩んでいらっしゃるFPもいましたので、十分注意してください。
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