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第206回
年金月額12万円の意味するところは
社会保険労務士 桶谷 浩
● 今回の新幹線の事件から
  先般衝撃を与えた新幹線放火自殺事件の容疑者は「月々の年金が少ない」ということが不満で、それが犯行の理由の一つだったという報道がされています。
  報道により伝えられているところによると、年金額は1回の振り込み(2か月分)が24万円、月額12万円だったそうです。
  この額については既にさまざまな解説が出ていますが、改めて私なりに考えをまとめてみました。
  そもそも月額12万円という水準は年金的にはどのくらいのものなのでしょうか?
  一つのケースを設定してみます。ある女性――専業主婦でしたが30歳の時に夫と離婚し、その後は生活のため、子供を育てるために会社に勤め始めました。そのようなある程度の年齢になってからの採用の場合は、一般職の仕事にしか就けず、しかも「大幅な昇給」は望めないことが一般的ではないでしょうか。給与は若干上がったとしても定年までの期間を通して見ると、横ばいに近い右肩上がりかわずかな上昇カーブを描くくらいでしょう。
  仮にその女性の生涯平均の給与が20万円(年額240万円)、賞与が3.6か月(半期36万円)、年収ベースでいうと312万円だったとします。ちなみに、1年を通じて勤務した女性の給与所得者の平均賃金は272万円(国税庁「平成25年分 民間給与実態統計調査」より)ですから、この額でも平均以上です。
  この方が30歳から60歳まで30年間、厚生年金に加入することで受け取れる年金は、月額で4万2,750円になります。
200,000円×7.125/1000×30年×12か月=513,000円(年額)
513,000円÷12か月=42,750円
※  賞与を3.6か月と仮定した場合の総報酬制前後を通算した簡略式で計算、再評価率を考慮しないなど、実際の額とは異なりますのであくまで参考としてお考えください。
  これに国民年金が満額の40年納付の分(年額78万100円、月額約6万5,000円)が加わるとしても、合わせて10万8,000円弱にしかなりません。
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