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第207回
すでに大企業の動きは始まっていた
社会保険労務士 桶谷 浩
● パートの労働時間が減らされている!?
  短時間労働者に対する厚生年金の適用範囲の拡大は来年10月から実施の予定で、まだ1年以上の期間があります。しかし最近の年金相談で、「自分はパートだが、労働時間をかなり削られた」というお話がいくつかありましたので、ちょっと気になっています。
  厚生労働省の資料に適用範囲の詳細が出ています。現在は週30時間(正社員の4分の3の労働時間)以上が対象ですが、来年10月からは従業員501人以上の会社で、下記の@とAの両方の要件を満たした者は適用になるように変更されます(他の要件については、下記の参照「短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大」をご覧ください)。
   勤務時間:週20時間以上
   月額賃金:8.8万円(年収約106万円)以上
参照 厚生労働省年金局「短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大」(平成26年9月18日)
  今月の年金相談でお聞きした女性の方のお話では、「夫の稼ぎが少なく、生活の足しに」と1年毎の契約更新という形でパートタイマーとして大手スーパーマーケットに勤めていたところ、今年の契約更新の条件提示で、労働時間を大幅に減らすような内容が書いてあったとのこと。聞けば他のパート・アルバイトの方も同じような条件が提示され、その条件で契約更新をするように勧められているとのことでした。会社側の説明等具体的な文章を見ていませんので断定できませんが、全社的にパート・アルバイトの労働時間が一律に削られているのであれば、これは明らかに来年の社会保険(厚生年金)の加入適用範囲拡大への会社の対応のにおいがします。
  ご存じのようにパート・アルバイトには現在、「103万円の壁」と「130万円の壁」という2つの壁があります。103万円の壁は税金(所得税)の壁、130万円は社会保険の壁です。103万円のほうはそれを超えて働くとパートで稼いだ賃金に税金がかかるというポイントですから、100%パート・アルバイト側だけの問題になり、パート・アルバイトの収入が103万円を超えて所得税を払おうが払うまいが、会社側が関知する問題ではないのです。
  ところが、社会保険(厚生年金・健康保険)の第3号および扶養となるための要件である130万円のほうは状況が全く異なります。社会保険の保険料は、ご存じのように労使折半、ここが問題なのです。
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