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厚生年金基金問題の収束の方向性を探る
年金数理人/日本アクチュアリー会 正会員 中林 宏信
● 厚生年金基金の解散で連鎖倒産の恐れも…
  AIJ投資顧問による年金消失問題が起きて以来、厚生年金基金に関する報道が続いており、その行く末に皆が注目しています。
  厚生労働省では有識者会議を設置して、この問題の再発防止策に留まらず、厚生年金基金の在り方にまで範囲を広げて、議論を重ねています。直近では、基金が解散する際の国への返済額を減らすことや、基金の構成企業が不足額を連帯して負担する制度を廃止するとの報道もなされています。ただ、そうなると、国への返済額が減る分を厚生年金本体の財政で補填することになってしまうので、反対意見も予想されます。
  AIJ問題で財政状況が悪化した厚生年金基金に加入している企業としては、国の救済策を期待していますが、現民主党政権では公的資金や厚生年金本体の財政での負担はしない、「自己責任」との基本姿勢で検討を進めるとしています。しかし、資金力がない中小企業では、積立不足の拠出は難しく、いわゆる「ない袖は振れない」状態に落ちることは火を見るより明らかです。
  加えて、今の厚生年金基金では、加入している企業が倒産してしまうと、残る企業が返済を肩代わりする連帯責任の問題があります。このままでは、厚生年金基金の解散による連鎖倒産の恐れがあり、地域経済への影響も予想されますので、何らかの国の救済は必要だと思います。
  自民党では、AIJ問題で被害を受けた代行割れ基金のために、代行部分に相当する最低責任準備金を公的年金の積立割合である約4割に減額する案や、破綻が懸念される基金には、積立不足の拠出を求めない「あるだけ解散」を認めるとしています。結果的には最低責任準備金を納付しないわけであり、厚生年金保険料の未納と本質的に同じなのでしょうが、容認せざるを得ない一面もあるかもしれません。
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