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厚生年金基金脱退の自由とは
年金数理人/日本アクチュアリー会 正会員 中林 宏信
● 厚生年金基金脱退を巡る初めての判決
  長野県の建設会社が、厚生年金基金の財政悪化を理由に、厚生年金基金からの脱退を求めて争った訴訟で、長野地裁は「やむを得ない事由がある場合には、基金の代議員会の議決や承認は不要」と加入企業の脱退を認める判決を今年の8月24日に出しました。
  事の経緯は、昨年、従業員1人当たり約200万円が見込まれた特別掛金を支払って脱退しようとした2つの企業に対し、厚生年金基金の代議員会が脱退を認めなかったために、そのうちの1社が訴訟を起こした、というものです。
  原告側は、脱退の自由は企業の基本的権利で、脱退を制限することは公序良俗に反すると主張。一方、被告側の厚生年金基金は、基金は公的な性格を持つ組織であり、基金の安定運営には加入する企業の確保が不可欠だとし、企業の脱退に対して一定の制限を課すことは基金の性格上当然と反論していました。
  これまでも厚生年金基金の脱退を巡る訴訟はありましたが、和解に落ち着いていることもあり、裁判所が判決を下したという点では今回が初めてのケースであるため、注目されています。
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