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受給者の給付減額を考える
年金数理人/日本アクチュアリー会 正会員 中林 宏信
● 給付減額には厚生労働大臣の認可が必要
  今年9月、東京電力の確定給付企業年金受給者の給付減額を厚生労働省が認可したとの報道がありました。2007年9月末までの旧適格退職年金の受給者は固定金利型(6.5〜3.5%)から国債利回りに連動する変動金利型(下限2.25%)に変更、2007年10月以降の退職者は既に変動金利型となっていますが、下限利率を2.0%から1.5%に引き下げるとしています。また、75歳以降の終身年金は支給額を30%削減し、月額7万円を5万円に引き下げるとしています。
  確定給付企業年金や厚生年金基金の受給者の給付減額については、理由要件及び手続要件を満たしたうえで、厚生労働大臣の認可が必要となっています。
  理由要件は、
   設立事業所の経営状況の著しい悪化により、給付減額を行うことがやむを得ないこと
(連合型、総合型にあっては大半の設立事業所において経営状況が著しく悪化)
ないしは
   A 給付減額しなければ、掛金の額が大幅に上昇し、事業主の掛金拠出が困難になると見込まれるため、給付減額を行うことがやむを得ないこと(設立時又は直近の給付水準の変更時から5年以上が経過している場合)
等、一定の要件を満たす場合となっています。
   また、手続要件としては、
   全受給者に対し、事前に十分な説明と意向確認を行う
   A 減額対象者となる全受給権者の3分の2以上の同意が必要
   B 希望者に対して、減額前の年金額に相当する額を一時金として受給するという選択肢を設けること
となっています。
  東京電力では、直近の3年間のうち2年間連続で大幅な赤字となっており、理由要件を満たしており、手続要件も満たしたことで受給者の給付減額が認められましたが、過去、NTTの企業年金では、受給者の同意はとっても、当期利益を継続的に計上して経営悪化の状態にはないとされ、理由要件は満たせず、受給者の給付減額が認められませんでした。NTT側としては、構造的な減益減収の傾向が続いており経営状況は厳しく、給付減額をしないと掛金負担が困難となり、企業年金を廃止せざるを得ない状態にあるとの言い分もあり、今の給付減額要件は厳しいとの声もあるようです。
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