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中小企業にふさわしい退職給付制度とは
年金数理人/日本アクチュアリー会 正会員 中林 宏信
● 「廃止」という言葉が独り歩き
  11月2日、厚生労働省は、厚労相の諮問機関である社会保障審議会の下に設置された年金部会の第1回厚生年金基金制度に関する専門委員会で、施行日から10年かけて厚生年金基金を段階的に縮小し、廃止することが示された「厚生年金基金制度の見直しについて(試案)」(以下、改革試案)を提示しました。
  年内を目途に年金部会としての成案を得た上で、来年の通常国会に関連法案を提出して審議される予定でしたが、厚生年金基金制度の存続または廃止、代行割れの厚生年金基金に解散を促すための支援策をめぐって意見が分かれていることから、多角的な検討が必要となるため、厚生年金基金制度改革の最終案をまとめる時期を年明けに先送りすることになりました。12月16日に実施される衆議院選挙で成立する政権の意向も反映されることになるでしょう。
  この改革試案の表題には「見直し」とありますが、その結論は「代行制度は改正法の施行日から10年の移行期間をもって段階的に縮小し、廃止する」とあり、報道等では「廃止」という言葉が独り歩きしている感があります。現在、厚生年金基金で仕事をしている役職員のやる気をそぐ面もありますし、廃止という言葉のネガティブさを考えると、報道などで使う言葉は慎重に選ぶべきではないでしょうか。
  適格退職年金でも「廃止」という言葉は使われましたが、どちらかというと、制度の「移行」のほうが主に使われていました。つまり制度「存続」が基本であり、制度をなくすわけではないということで、今回の厚生年金基金に関する改革も、むしろ新しい企業年金の時代へ向かうことを目指すべきと思います。それが、多くの企業年金を失わないために、そして企業年金の税制優遇への道を閉ざさないために必要なのでしょう。
● 改良したDBとDCが受け皿に!?
  改革試案にも新しい企業年金の話は盛り込まれており、「我が国の経済基調が低成長へと変化し、金融市場の変動幅が拡大する中で、持続可能な企業年金を普及させるため、企業年金の選択肢の多様化を進める」、また、「中小企業の企業年金を維持する観点から、厚生年金基金から他の企業年金への移行を支援するための特例措置を設ける」とあり、「現行の確定給付企業年金(DB)や確定拠出年金(DC)の枠組みの中で、できる限り制度運営コストが低く、また、企業の追加負担が少ない企業年金の選択肢を増やす」ことを前提に設計された2つの受け皿となる制度が示されました。
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